数学大好き宣言!

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いろいろな乗法的関数の母関数

 乗法的関数とは、自然数の関数であって、自然数a,bが互いに素なとき、f(ab)=f(a)f(b)となる関数のこと。そのような関数の母関数\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}f(n)x^nを(収束は厳密には考察せずに、級数の操作で)考察する。

まず、p素数として、a(n)=\begin{cases}0(nがpの倍数のとき) \\1(nがpの倍数でないとき)\end{cases}

とすると、これは乗法的関数となる。完全乗法的(互いに素の条件が要らない)でもある。このとき、

b(n)=\begin{cases}1(nがpの倍数のとき) \\0(nがpの倍数でないとき)\end{cases}

(a(n)と0,1が逆) として a(n)=1-b(n)だから、\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}a(n)x^n=\sum_{n=1}^{\infty}x^n-\sum_{n=1}^{\infty}b(n)x^n=\sum_{n=1}^{\infty}x^n-\sum_{n=1}^{\infty}x^{pn}\\\displaystyle=\frac{x}{1-x^n}-\frac{x^p}{1-x^{pn}}(x\lt 1)

同様に、集合Pを素数の部分集合として、

a(n)=\begin{cases}0(nがp\in Pの倍数のとき) \\1(nがp\in Pの倍数でないとき)\end{cases}

とすると、\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}a(n)x^n=\frac{x}{1-x^n}-\sum_{p\in P}\frac{x^p}{1-x^{pn}}(x\lt 1) ※ここで、右辺の級数が無限のときの収束を考慮していない。

次に,nの素因数分解2^{e_2}\cdot 3^{e_3}\cdot 5^{e_5}\cdot~\cdotsとしたとき、a(n)=c^{e_2}(cは定数)とする。たとえば、6=2・3よりa(6)=c, 7=2⁰・7だからa(7)=c⁰=1、12=2²・3よりa(12)=c²など。このときa(n)は乗法的で、完全乗法的でもある。この関数の母関数を求めるために、

A_k(n)=\begin{cases}c^{k-1}(nが2^{k}の倍数のとき) \\0(nが2^kの倍数でないとき)\end{cases}

を考える。a(n)=c^mのとき、nを割る最大の2の冪乗は2^mだから、\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty}A_k(n)=\sum_{k=1}^{m}A_k(n)=\sum_{k=1}^mc^{k-1}=\frac{c^m-1}{c-1}=\frac{a(n)-1}{c-1}

よって、\displaystyle a(n)=1+(c-1)\sum_{k=1}^{\infty}A_k(n) だから、\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}a(n)x^n=\sum_{n=1}^{\infty}(1+(c-1)\sum_{k=1}^{\infty}A_k(n))x^n=\sum_{n=1}^{\infty}x^n+(c-1)\sum_{k=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}A_k(n)x^n\\\displaystyle=\frac{x}{1-x}+(c-1)\sum_{k=1}^{\infty}\sum_{n=2^kN}c^{k-1}x^{n}=\frac{x}{1-x}+(c-1)\sum_{k=1}^{\infty}\frac{c^{k-1}x^{2^kn}}{1-x^{2^kn}}

次はより知られた関数である、約数関数\sigma(n)=(nの約数の個数)の母関数を求めてみる。これは簡単で、\displaystyle\sum_{m=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}x^{mn}=\sum_{k=1}^{\infty}\sigma(k)x^kとなる。これは\displaystyle\sum_{m=1}^{\infty}\frac{x^m}{1-x^m}=\sum_{m=1}^{\infty}\frac{1}{x^{-m}-1}ともかける。

次に、

f(n)=\begin{cases}1(nが平方数のとき) \\0(nが平方数でないとき)\end{cases}

とする。これはちょっと面白い。a,bが互いに素のとき、ab=m^2ならばa,bはともに平方数となり、逆も明らかに成立。 nが平方数⇔f(n)=1であったから

f(ab)=1\Leftrightarrow f(a)=f(b)=1,否定命題も真だからf(ab)=0\Leftrightarrow f(a)=f(b)=0.よってf(n)は乗法的関数となる(完全乗法的関数ではない)。母関数は\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}f(n)x^n=\sum_{n=1}^{\infty}x^{n^2}  これを、ヤコビの三重積公式を使って変形する。ヤコビの三重積公式から得られる、\displaystyle\sum_{n=-\infty}^{\infty}x^{n^2}=\prod_{m=1}^{\infty}(1-x^{2m})(1+x^{2m-1})^2の左辺を変形して、\displaystyle\sum_{n=-\infty}^{\infty}x^{n^2}=1+\sum_{n\neq0}x^{n^2}=1+2\sum_{n=1}^{\infty}x^{n^2}.よって\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}x^{n^2}=-\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\prod_{m=1}^{\infty}(1-x^{2m})(1+x^{2m-1})^2となる。