環論メモ(極大イデアルによる剰余環)
は、nが素数のときのみ体になる。これは整数論で有用だ。これを一般化しよう。
今回の主定理
:環, :イデアルとする。このとき、
は極大イデアル剰余環は体。
まず次の補題を示す。
補題
環が体のイデアルはと自身のみである。
証明
まず、が体であるとする。をイデアルとし、とする。仮定よりあるがあって. よって. よって任意のに対して.よって. 以上よりまたは.
逆に、のイデアルはと自身のみであるとする。任意にをとると、またはであり、前者のとき、任意のに対してだから. 後者のとき、よりある が存在してとなるからは可逆元。よって任意の元が零元か可逆元だから、は体。(終)
さらに前回(環論メモ(イデアルと剰余環) - 数学大好き宣言!)より、次が言える:
定理 :環, :イデアル, :自然な射影とする。このとき、のを含むイデアルと、のイデアルは一対一対応し、その対応は, で与えられる。
これらを用いて、主定理を証明しよう。
主定理の証明
まず、を極大イデアルとする。を含むのイデアルはのみだから、のイデアルはとのみ. よっては体。
逆にが体であるとすると、を含むのイデアルは とのみ. よっては極大イデアル。(終)
例
:体、 とする。が体であることと、が既約であることは同値。
証明: は単項イデアル環だから、 はを割り切る。よってが既約なことはが極大イデアルであることと同値。
こうして体の拡大の理論も支えている定理なのだ。