数学大好き宣言!

勉強メモ。おもしろいことを探していきたい。

【個人的メモ】勉強したい数学まとめ

いま興味をもっていること。随時更新したい。

虚数乗法、志村の周期記号
・ガンマ関数(の有理値)とは何なのか。
多変数ベータ関数の有理値がガンマの積に分解することを、直接代数的に示せるか?
ガウス和、ヤコビ和とは何なのか。フェルマー多様体のF_q点の個数を与えるのは分かるが、周期積分のような何かなのか。
・周期(コホモロジーの)
・グロタンディークの周期予想
・多重ゼータ関数は周期積分だから、その関係式は積分変換で出ることが予想される。これは(代数)幾何的にはどうなっているのか。
・モジュラー形式は微分形式らしい。でも勿論モジュラー形式は基本領域のなすリーマン面上の関数ではない。どういう定義なのだろう。上半平面の商になっていることまで考えず保型形式が定義できるなら凄い。
・楕円シグマ関数は素因子と思えるがなぜなのか。テータ関数も因子なのか。
・テータ関数は保型因子というらしい。これは代数幾何の因子と関係するのか?
・xy=1が群C^{×}の構造を持つのがわからない。楕円曲線の群構造は因子類群だが、xy=1は球面と有理同値だから、その因子類群は自明になってしまうはず。どういう代数的操作で得られるんだろう。
・望月先生のモチーフの解説を理解できるようになりたい。上にある周期の理解と、エタールコホモロジーを勉強しないといけない。
ガウス整数の虚数乗法、等分点拡大のガロア群がZ[i]/pZ[i]の部分群なのは分かるが、一致することが示せない。既約性と関係する。どうやって示すのか?ガウス和で解の個数を求められることを利用できないか。
・相互法則を(p/l)=(l/p)って書いたりするが、l進表現の何かと思えるのか。
多元環整数論。どれくらい代数体の類似ができるのか。四元数ゼータ関数はどんな分解をするか。また、ガロア表現のゼータ関数となるか。四元数ゼータ関数を用いて、相互法則を証明できると聞いたが、どんな仕組みなのか。分岐不分岐などの用語があるようだが、代数体の場合のどのような一般化になっているのか。
・代数群の整数論多元環の乗法群は代数群となるが、多元環整数論は代数群の整数論に含まれるか。どんなゼータ関数があるのか。一般のn元二次形式にも種や類が定義されるらしく、また、代数群にも種が定義されるらしが、関係するのか。二元二次の場合の定義と一致するか。
類体論、二次体の種の理論。三元二次の局所大域原理との関係。算術級数定理を使わない、ガウスの三元二次形式による証明とはどんなものか。高木代数的整数論類体論の証明と、高木初等整数論講義の種の理論の証明にはとても類似性がある。実際どれくらい一致しているか。類体論の現代風の証明というものと、高木本の類体論の証明はどんな関係にあるのか。高木の証明では多元環なんて出てこなかったが、どう出てくるのか。ガウスの三元二次形式による証明が算術級数定理を使わないのは、類体論ゼータ関数を使わない証明が見つかったことと似ているように思えるが、関係があるのか。
・代数体はコホモロジー的に3次元多様体のようらしい。
・電磁気と整数論の類似。
・総実体の類体構成問題。新谷スターク予想、新谷のゼータ関数の分解。スターク予想自体も分かりたい。また、これらや多重三角関数と、テータ関数やアーベル関数の関係。
クロネッカーの極限公式の証明について。極限公式はゼータ正規化積の一種と思えて、通常の積と思うととてもシンプルな公式になっている。これを利用するような綺麗な証明はないか。また、うまく比をとれば収束する無限積の公式とできるはずで、これならシンプルな証明ができたりしないか。
・テータ関数、アーベル関数の、ペー関数に類似した無限乗積表示はあるか。
・ヤコビ多様体トポロジー的にもおもしろい気がするが、何が起きているのか。
・楕円ラムダ関数がSL(2,Z)でなくΓ(2)のモジュラー形式になるのは何故か。
・y^2=x^4+1のように、射影代数多様体特異点があると何がまずいのか。ヤコビ多様体などでまずいことが起きるのか。
クロネッカーの合同関係式あたりの話。虚数乗法の数論との関係。
・スペクトル分解定理の、vN環的な証明ができないか。通常はT→C[T]→{f(T)|f\in C^0}→{f(T)|f:可積分}と進めて射影を得るが、C[T]の二重可換子をとってもvN環(=射影を豊富にもつらしい)を得ることができる。
・L^∞(Ω)から測度空間Ωをある意味復元できることの、射影を使った証明。証明自体は見つけたのだが、C*環から位相空間を復元する定理をL^∞(Ω)に適用すると、ストーン空間になる、という証明しか見つからなかった。
・測度論で、連続関数の空間の汎関数は、デルタ関数的な部分と、測度の部分に分解できると聞いた。一般の超関数にもこのような分解があるのだろうか。
関数解析。スペクトル分解とスペクトルの関係を知りたい(R全体で積分するバージョンしか知らない)
フーリエ変換調和振動子と関係があるようだ。しかしなぜ調和振動子なのか。f(x)+f(d/dx)は何でもフーリエ変換と可換なはずだ。なぜx^2+(d/dx)^2が特別なのだろう。
シュレーディンガー方程式、離散スペクトルの場合。V→∞なら離散になることの証明。固有値分布のワイルの公式。減少的なら束縛状態が有限で...も知りたい。
・球極座標ラプラシアンはなぜ、シンプルにまとまるのか。(ちょっと複雑だが、あり得る項数よりはずっと少ない。)またなぜ固有値問題が変数分離法で解けるのか。
・二次元の△f=0をコーシーリーマン方程式に分解するのも、ディラック方程式らしい?
・直積分(直和の積分版)。波動方程式などは、これをうまく使えばシンプルに解けそうだがどうか。
・行列の摂動を代数幾何的に。
・モジュラー曲線。モジュラー曲線から楕円曲線を得る方法。そのようにして得た楕円曲線ゼータ関数が関数等式を満たすこと。これにはヘッケ作用素とフロベニウスの関係を言わないといけないらしい。
積分する作用素は関数空間の双対空間の元だから、超関数と思える。だからストークスの定理は超関数の微分公式だと思えるはず。
・ナブラは色々と良い公式を満たすが、統一的に理解できないか。
・「自明なテータ関数」がガウス分布と似ているようだがなぜか。また一番基本のテータ関数は、円周の熱核になっているようだが、深い意味はあるか。代数的性質と微分方程式は関係するか?
・物理のネーターの定理が知りたい。
・アデール上の解析学。テータ、ゼータ関数
・群の表現論とスペクトル分解定理の関係。後者が前者に含まれるはず(前者は後者の一般化になっているはず)。なぜなら、自己共役作用素Aに対してR→B(H),t\mapsto e^{itA}はRのユニタリ表現になっているから。

合同ゼータ関数のオイラー積表示

①点とは準同型である

\begin{align*}
  &K,L\mbox{:体,}~~~K\subset L,
  \\&F_1,\cdots,F_n\in K[x_1,\cdots,x_m],
  \\&V(L)=\{(a_1,\cdots,a_m)\in L^m~|~ F_1(a_1,\cdots,a_m)=\cdots=F_n(a_1,\cdots,a_m)=0\},
  \\&R=K[x_1,\cdots,x_m]/(F_1,\cdots,F_n)
  \\&\mbox{とする.}
  \\&P=(a_1,\cdots,a_m)\in V,~~\bar{f}(x_1,\cdots,x_m)\in R~~~\mbox{に対して}
  \\&\phi_P:R\rightarrow L,~~~\phi_P(\bar{f})=f(a_1,\cdots,a_m)~~~\mbox{とする.}
  \\&P\in V(L)~\mbox{よりこれはwell-definedな}K\mbox{-多元環準同型.}
  \\&Hom(R,L)=\{\phi:R\rightarrow L ~|~ \phi\mbox{は}K\mbox{-多元環の準同型}\}
  \\&\mbox{【命題】}
  \\&V(L)\rightarrow Hom(R,L),~~~P\mapsto \phi_P~~~\mbox{は全単射.}
  \\&\mbox{証明}
  \\&\mbox{単射性:}P,Q\in V(L),~~\phi_P=\phi_Q \mbox{のとき,}
\\&P=(\phi_P(x_1),\cdots,\phi_P(x_m))=(\phi_Q(x_1),\cdots,\phi_Q(x_m))=Q
  \\&\mbox{より}P=Q.
  \\&\mbox{全射性:}\phi\in Hom(R,L)\mbox{とする.}
  \\&P=(\phi(x_1),\cdots,\phi(x_m))\mbox{とすると}
  \\&\bar{f}(x_1,\cdots,x_m)\in R~~~\mbox{に対して}
\\&\phi_P(\bar{f}(x_1,\cdots,x_m))=f(\phi_P(x_1),\cdots,\phi_P(x_m))
\\&=f(\phi(x_1),\cdots,\phi(x_m))=\phi(\bar{f})~~\mbox{だから}
\\&\phi_P=\phi\mbox{であり,}
  \\&\mbox{各}t\in\{1,\cdots,n\}\mbox{に対して}
  \\&F_t(\phi(x_1),\cdots,\phi(x_m))=\phi(F_t(x_1,\cdots,x_m))=\phi(0)=0.
  \\&\mbox{よって}P\in V(L).~~\mbox{よって}\phi_P=\phi\mbox{である}P\in V(L)\mbox{が存在する.}
  \\&\mbox{以上より全単射.}
\end{align*}


②準同型の本数と極大イデアルの個数

\begin{align*}
& p:\mbox{素数}~~~K={\mathbb F}_p~~~L={\mathbb F}_{p^k}
\\&Surj(R,{\mathbb F}_{p^k})=\{\phi:R\rightarrow{\mathbb F}_{p^k} ~~|~~\phi\mbox{は全射な}{\mathbb F}_p{-代数の準同型}\},
\\&M_k=\{I\subset R ~|~ I\mbox{は極大イデアルでノルムは}p^k\}
\\&\mbox{とする.}
\\&\phi\in Surj(R,{\mathbb F}_{p^k})\mbox{とする.}
\\&\mbox{準同型定理より}R/ker\phi \cong {\mathbb F}_{p^k}.
\\&\mbox{よって}ker\phi\in M_k.
\\&\mbox{逆に}I\in M_k \mbox{とする.}
\\&\mbox{このとき,}R/I\cong{\mathbb F}_{p^k}.
\\&\pi:R\rightarrow R/I\mbox{を射影,}~~\Phi:R/I\rightarrow{\mathbb F}_{p^k}\mbox{を同型写像とすると,}
\\&\ker(\Phi\circ\pi)=I,~~~\Phi\circ\pi:R\rightarrow{\mathbb F}_{p^k}\in Surj(R,{\mathbb F}_{p^k}).
\\&\mbox{よって}
\\&Surj(R,{\mathbb F}_{p^k})\rightarrow M_k,~~\phi \mapsto ker\phi
\\&\mbox{は全射な対応.}
\\&\Phi\mbox{は}|Aut({\mathbb F}_{p^k})|=k\mbox{通りあるから,対応はn対1.}
\end{align*}

③点の個数と極大イデアルの個数

\begin{align*}
\\&\mbox{有限体の部分環は部分体だから(※),}
\\&{\mathbb F}_{p^k}\mbox{への環準同型は}{\mathbb F}_{p^k}\mbox{のある部分体への全射準同型.}
\\&{\mathbb F}_{p^k}\mbox{の部分体全体は}\{{\mathbb F}_{p^j} ~|~ j|k \}\mbox{だから,}
\\&Hom(R,{\mathbb F}_{p^k})=\bigsqcup_{j|k}Surj(R,{\mathbb F}_{p^j})  ~~~(\bigsqcup\mbox{は非交和.})
\\&V({\mathbb F}_{p^k})\mbox{は有限集合であり,}
\\&|V({\mathbb F}_{p^k})|=|Hom(R,{\mathbb F}_{p^k})|=\sum_{j|k}|Surj(R,{\mathbb F}_{p^j})|=\sum_{j|k}j|M_j|.
\end{align*}
※→こちらの上から2番目の回答を参照https://math.stackexchange.com/questions/574367/is-any-subring-of-a-field-which-contains-the-identity-is-itself-a-subfield

④合同ゼータ関数オイラー積表示

\begin{align*}
\\&\zeta_V(u)=\exp \left( \sum_{k=1}^{\infty}\frac{|V({\mathbb F}_{p^k})| u^k}{k} \right)
\\&\mbox{をアフィン代数多様体)}V\mbox{の合同ゼータ関数という.}
 \\&\sum_{k=1}^{\infty}\frac{|V({\mathbb F}_{p^k})| u^k}{k}
\\&=\sum_{k=1}^{\infty}\frac{u^k}{k}\sum_{j|k}j|M_j|
\\&=\sum_{i=1}^{\infty}\sum_{j=1}^{\infty}\frac{u^{ij}}{ij}j|M_j|
\\&=\sum_{j=1}^{\infty}|M_j|\sum_{i=1}^{\infty}\frac{u^{ij}}{i}
\\&=\sum_{j=1}^{\infty}|M_j|(-\ln(1-u^j))
\\&=\ln\prod_{j=1}^{\infty}\left( \frac{1}{1-u^j} \right)^{|M_j|}
\\&\exp \left( \sum_{k=1}^{\infty}\frac{|V({\mathbb F}_{p^k})| u^k}{k} \right)=\prod_{j=1}^{\infty}\left( \frac{1}{1-u^j} \right)^{|M_j|}
\\& u=p^{-s}\mbox{とすると}
\\&\zeta_V=\prod_{j=1}^{\infty}\left( \frac{1}{1-p^{-sj}} \right)^{|M_j|}=\prod_{I\subset R,~N(I)\lt\infty\\I\mbox{は極大イデアル}}\left( \frac{1}{1-N(I)^{-s}} \right)
\\&\mbox{ただし、}N(I)=|R/I|\mbox{はノルム.}~~(R/I\mbox{の標数は}p\mbox{だから、}M_j\mbox{ですべてのノルムが有限な極大イデアルが尽くされる.})
\end{align*}

メモ(楕円積分の変形と特別な場合の表示)

楕円積分について。
(1)ヤコビの楕円関数型とワイエルシュトラスの楕円関数型の関係
f:id:mochi-mochi61:20220308224730j:plain

(2)特別な場合の、ガンマ関数による表示
f:id:mochi-mochi61:20220308224900j:plain
chowla・selbergの公式の特殊な場合だと思うのだが、どうだろうか。

メモ:あるディリクレL関数の微分と無限積

\displaystyle L(s)=\sum_{k=0}^{\infty}( (5k+1)^{-s} - (5k+2)^{-s} -(5k+3)^{-s} +(5k+4)^{-s})
とする。(平方剰余なものを+、平方非剰余のものをーで足している。)
\frac{d}{ds}n^{-s}=-n^{-s}\log n
だから
\exp(-L'(0))=\displaystyle\prod_{k=0}^{\infty}\frac{(5k+1)(5k+4)}{(5k+2)(5k+3)}\\=\displaystyle\prod_{k=0}^{\infty}\frac{(k+1/5)(k+4/5)}{(k+2/5)(k+3/5)}
↓この記事の式より、
ガンマ関数の積の比の無限積表示・多変数ベータによる表示 - 数学大好き宣言!
\displaystyle\prod_{k=0}^{\infty}\frac{(k+1/5)(k+4/5)}{(k+2/5)(k+3/5)}
\\=\dfrac{\Gamma(1/5)\Gamma(4/5)}{\Gamma(2/5)\Gamma(3/5)}
\\=\dfrac{\sin(4\pi/5)}{\sin(2\pi/5)}
\\=\zeta +\zeta^{-1}
\\(\zeta=e^{2\pi i/5})

次に、
S=\{2,3,4,5,6,7,8\},
\left( \dfrac{n}{7} \right)ルジャンドル記号とする。
\displaystyle L(s)=1^{-s} + \sum_{k=0}^{\infty}\sum_{a\in S}\left(\dfrac{a}{7} \right) (7k+a)^{-s}
とする。
\frac{d}{ds}1^{-s}=0,~~\frac{d}{ds}n^{-s}=-n^{-s}\log n
だから
\exp(-L'(0))=\displaystyle\prod_{k=0}^{\infty}\frac{(7k+2)(7k+4)(7k+8)}{(7k+3)(7k+5)(7k+6)}\\=\displaystyle\prod_{k=0}^{\infty}\frac{(k+2/7)(k+4/7)(k+8/7)}{(k+3/7)(k+5/7)(k+6/7)}
2+4+8=3+5+6 だから、
↓この記事の式より、
ガンマ関数の積の比の無限積表示・多変数ベータによる表示 - 数学大好き宣言!
\displaystyle\prod_{k=0}^{\infty}\frac{(k+2/7)(k+4/7)(k+8/7)}{(k+3/7)(k+5/7)(k+6/7)}
\\=\dfrac{\Gamma(2/7)\Gamma(4/7)\Gamma(8/7)}{\Gamma(3/7)\Gamma(5/7)\Gamma(6/7)}
これも代数的数になるだろうか。

負整数ゼータ値の合同式

定理:
f:id:mochi-mochi61:20220216215806p:plain
証明:
非負整数 r に対して
f_r(t)=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty} n^r t^n とすると、
f_0(t)=\dfrac{1}{1-t},
f_{r+1}(t) = \displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}n^r \cdot nt^{n-1} \cdot t = t{f_r}'(t)
だから、帰納的に
f_r(t)=\dfrac{F_r(t)}{(1-t)^{r+1}} ~ (F_r(t)\in {\mathbb Z}[t])
が分かる。
r\leq r', ~ r\equiv r' \mod p-1 のとき、フェルマーの小定理より
\forall n \in {\mathbb N} ~~ n^{r}\equiv n^{r'} \mod p だから、
f_r(t) - f_{r'}(t) = \displaystyle\sum_{n=1}^{\infty} (n^r -n^{r'})t^n =p \sum_{n=1}^{\infty} c_n t^n ~~ (c_n \in {\mathbb Z})
よって冪級数の積より \dfrac{(1-t)^{r'+1}(f_r(t)-f_{r'}(t))}{p} は整係数冪級数
一方\dfrac{ (1-t)^{r'+1}(f_r(t)-f_{r'}(t))}{p}=\dfrac{(1-t)^{r'-r}F_r(t)-F_{r'}(t)}{p}多項式でもある。
よって\dfrac{ (1-t)^{r'+1}(f_r(t)-f_{r'}(t))}{p} は整係数多項式だから、
そのp倍である (1-t)^{r'+1}(f_r(t)-f_{r'}(t)) は各係数がpの倍数である整係数多項式
よって 2^{r'-r}(f_r(-1) - f_{r'}(-1)) \equiv 0 \mod p だから、p\neq 2のとき f_r(-1)\equiv f_{r'}(-1) \mod p.
f_r(-1)=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty} (-1)^n n^r =-\zeta(-r)+2^{r+1}\zeta(-r) =(2^{r+1}-1)\zeta(-r) だから、
 (2^{r+1}-1){\zeta(-r)} \equiv (2^{r'+1}-1){\zeta(-r')} \mod p.

フェルマーの小定理オイラーの定理に変更することで、
n:奇数, r\equiv r' \mod\phi(n) のときに一般化できる。

また、今回は-1における特殊値を用いたが、例えば1の原始三乗根ωを用いると
\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}n^r + \sum_{n=1}^{\infty}n^r \omega^n + \sum_{n=1}^{\infty}n^r \omega^{2n} =3\sum_{n=1}^{\infty}(3n)^r
となるから
\zeta(-r)=\dfrac{f_r(\omega)+f_r(\omega^2)}{3^{r+1} - 1}
となって、追加因子が3^{r+1}-1になる。n:奇数の条件も変化するだろう。

【ガロア理論】Q(2^{1/4}, i) の自己同型群

Aut({\mathbb Q}(\sqrt[4]{2},i)/{\mathbb Q})を求めよう。
前回(【体論】共役と自己同型 - 数学大好き宣言!)の定理を使っていく。
簡単のため\sqrt[4]{2}=aとおく。
{\mathbb Q}(a,i)/{\mathbb Q}の自己同型\phi\phi(a)\phi(i)で一意に定まるから、
\phi(a)=\alpha, \phi(i)=\beta であるような自己同型を(\alpha,\beta)と書こう。例えば恒等写像\phi(a)=a, \phi(i)=iだから(a,i).
a{\mathbb Q}上の共役全体は\{a,ai,ai^2,ai^3\}だから、前回の定理1より\phi(a)\in \{a,ai,-a,-ai\}.
i{\mathbb Q}上の共役全体は\{i,-i\}だから、前回の定理2より\phi(i)\in \{i,-i\}.
よって(\alpha,\beta)\{a,ai,-a,-ai\}\times \{i,-i\}に対応する8つの候補のどれかである。

8つから絞り込んでいこう。
まず恒等写像はもちろん自己同型だから(a,i)\in Aut({\mathbb Q}(a,i)/{\mathbb Q}) (1つ目).
a{\mathbb Q}(i)上の最小多項式x^4-2で、aiはその根だからa{\mathbb Q}(i)上の共役であり、
{\mathbb Q}(a,i)={\mathbb Q}(ai,i)だから、前回の定理2より
(ai,i)\in Aut({\mathbb Q}(a,i)/{\mathbb Q}(i)).
Aut({\mathbb Q}(a,i)/{\mathbb Q}(i)) \subset Aut({\mathbb Q}(a,i)/{\mathbb Q}) だから、
(ai,i)\in Aut({\mathbb Q}(a,i)/{\mathbb Q}) (2つ目).
(ai,i)\circ(ai,i)=(ai^2,i)=(-a,i),~=(ai,i)\circ(-a,i)=(-ai,i) だから、
(-a,i),(-ai,i)\in Aut({\mathbb Q}(a,i)/{\mathbb Q}) (3,4つ目).
i{\mathbb Q}(a)上の最小多項式x^2+1で、-iはその根だからi{\mathbb Q}(a)上の共役であり、
{\mathbb Q}(a,i)={\mathbb Q}(a,-i)だから、前回の定理2より
(a,-i)\in Aut({\mathbb Q}(a,i)/{\mathbb Q}(a)).
一方Aut({\mathbb Q}(a,i)/{\mathbb Q}(a)) \subset Aut({\mathbb Q}(a,i)/{\mathbb Q}) だから、
(a,-i)\in Aut({\mathbb Q}(a,i)/{\mathbb Q}) (5つ目).
さらに、(\alpha,i)\circ (a,-i)=(\alpha,-i) (\alpha\in \{ai,-a,-ai\}) だから、(ai,-i),(-a,-i),(-ai,-i)\in Aut({\mathbb Q}(a,i)/{\mathbb Q}) (6,7,8つ目).
以上より、結局、候補であった8つはすべてAut({\mathbb Q}(a,i)/{\mathbb Q}) の元だと確認された.

集合としては決定されたから、群構造を決定しよう。
Aut({\mathbb Q}(a,i)/{\mathbb Q})=Gとおく。
{\rm id}=(a,i)=e, (ai,i)=\sigma, (a,-i)=\tau と書き、写像の合成\circを省略すると、
G=\{e, \sigma,\sigma^2,\sigma^3,\tau,\sigma\tau,\sigma^2\tau,\sigma^3\tau\}.
では、G={\mathbb Z}/4{\mathbb Z} \rtimes_{\phi} {\mathbb Z}/2{\mathbb Z} (ただし\phi:{\mathbb Z}/2{\mathbb Z} \rightarrow Aut({\mathbb Z}/4{\mathbb Z})\phi(n)(x)=(-1)^n x ((-1)^n写像)で定める)。
であることを示す。
\Phi:{\mathbb Z}/4{\mathbb Z} \rtimes_{\phi} {\mathbb Z}/2{\mathbb Z} \rightarrow G(a,b)\mapsto \sigma^a \tau^b で定め、これが同型であることを示す。
まず、同じ位数8の有限集合の全射であるから\Phi全単射
あとは準同型を示せばよい。\Phi( (a,b)(c,d) )=\Phi( (a+\phi(b)(c),~ b+d) )\\=\sigma^{a+(-1)^b c}\tau^{b+d}=\sigma^a \sigma^{(-1)^b c} \tau^b\tau^d .
ここで、\sigma\tau = (ai,i)\circ(a,-i) =(ai,-i)=(a,-i)(-ai,i)=\tau\sigma^3
また\sigma^4=eより\sigma^3=\sigma^{-1}だから、\sigma\tau=\tau\sigma^{-1}.
よって\sigma^{(-1)^b c} \tau^b = \tau^b (\sigma^{(-1)^{b}})^{(-1)^b c}=\tau^b \sigma^{(-1)^{2b} c}=\tau^b \sigma^c.
よって\sigma^a \sigma^{(-1)^b c} \tau^b\tau^d =\sigma^a \tau^b \sigma^c \tau^d =\Phi( (a,b) )\Phi( (c,d) ) だから、準同型。
よって示された。

【体論】共役と自己同型

体論の基礎事項。
定義(共役)
L/K:体の拡大、\alpha \in LK上代数的(i.e. あるF(x)\in K[x]が存在してF(\alpha)=0)な元とする。
\alphaK上の最小多項式fとする。(代数的であることより、最小多項式は存在する。)
\alpha' \alpha共役とは、f(\alpha')=0であることを言う。

定理1(自己同型は共役への置換)
L/K:体の拡大、\phi \in Aut(L/K) :自己同型写像\alpha \in L:K上代数的
このとき、\phi(\alpha)\alphaの共役。
証明
\alphaK上代数的だから、\alphaK上の最小多項式fとする。
\phiが同型写像であることより、
0=\phi(0)=\phi(f(\alpha))=f(\phi(\alpha)). よってf(\phi(\alpha))=0だから\phi(\alpha)\alphaの共役。

定理2(共役への置換は自己同型)
L/K:体の拡大、\alpha\in L: K上代数的、\alpha'\in K(\alpha): \alphaのある共役とする。
さらに、K(\alpha)=K(\alpha')\subset L とする。
\phi:K(\alpha) \rightarrow K(\alpha) を 、
F(\alpha)\in K(\alpha)(F(x)\in K[x]) に対して\phi(F(\alpha))=F(\alpha')で定義すると、これはwell-definedで、K(\alpha)の自己同型。
証明
well-defined を言うには、F(\alpha)=G(\alpha) \Rightarrow F(\alpha')=G(\alpha') (F,G\in K[x]) を言えばよい。
(F-G)(\alpha)=0 と最小多項式の性質より、\alphaの最小多項式fF-Gを割り切るから、あるQ(x)\in K[x] が存在して
(F-G)(x)=f(x)Q(x). よって\alpha'が共役であることより(F-G)(\alpha')=f(\alpha')Q(\alpha')=0.
よって移項してF(\alpha')=G(\alpha') だからwell-definedが示せた。
あとは同型を示せばよいが、文字を置換しているだけだから準同型は分かる。
また、\alpha,\alpha'の役割を交換すると、
\phi^{-1}(F(\alpha'))=F(\alpha)で定義される逆写像\phi^{-1}:K(\alpha)=K(\alpha')\rightarrow K(\alpha')=K(\alpha)はwell-definedな準同型となり、\phiは逆写像が存在する準同型写像であるから同型写像

定理3(単拡大の自己同型)
L/K:体の拡大、\alpha\in L: K上代数的、\alphaの共役全体を\{\alpha=\alpha_1,\cdots,\alpha_n\}とする。
さらに、K(\alpha)=K(\alpha_2)=\cdots=K(\alpha_n)\subset Lであるとする。このとき、K(\alpha)の自己同型全体は、
F(\alpha)\in K(\alpha)(F(x)\in K[x]) に対して\phi_k(F(\alpha))=F(\alpha_k) (k\in\{1,\cdots,n\}) で定義されるn本の写像である。
証明:定理2より各\phi_kはwell-defined な準同型であり、定理1より任意の準同型は\phi_kのいずれかだから。

メモ(三乗根による体拡大の自己同型?)

{\mathbb Q}(\sqrt[3]{2},\omega) / {\mathbb Q}の自己同型群を求めよう。
(1)
{\mathbb Q}(\omega)  = {\mathbb Q}(\omega , \omega^2) より、
{\mathbb Q}(\omega)/{\mathbb Q}x^2+x+1の根を添加する拡大だから、正規拡大。よってガロア拡大
また、{\mathbb Q}(\omega)  = {\mathbb Q}[x]/(x^2+x+1) だから拡大次数は2.
{\mathbb Q}(\sqrt[3]{2}, \omega)={\mathbb Q}(\sqrt[3]{2}, \sqrt[3]{2}\omega, \sqrt[3]{2}\omega^2)より、
{\mathbb Q}(\sqrt[3]{2},\omega) / {\mathbb Q}(\omega)x^3-2 の根を添加する拡大だから、正規拡大。よってガロア拡大
また、{\mathbb Q}(\sqrt[3]{2}, \omega)={\mathbb Q}(\omega)[x]/(x^3-2) だから拡大次数は3.
以上より{\mathbb Q}(\sqrt[3]{2},\omega) / {\mathbb Q}ガロア拡大で、拡大次数は6.
(2)
{\mathbb Q}(\sqrt[3]{2},\omega)/{\mathbb Q}(\sqrt[3]{2})の自己同型写像は、{\mathbb Q}(\sqrt[3]{2})の元を動かさないことより\mathbb Q の元も動かさないから、
{\mathbb Q}(\sqrt[3]{2},\omega) / {\mathbb Q}の自己同型写像でもある。
一方、{\mathbb Q}(\sqrt[3]{2},\omega)/{\mathbb Q}(\sqrt[3]{2})の自己同型は\omegaの行き先で決まるから簡単に求められ、{\mathbb Q}(\sqrt[3]{2})上の\omegaの最小多項式(x-\omega)(x-\omega^2)だから、{\rm id}\sigma(ただし\sigma(\omega)=\omega^2で定まる自己同型写像) の2つである。
全く同様に、{\mathbb Q}(\sqrt[3]{2},\omega)/{\mathbb Q}(\omega)の自己同型写像は、
{\mathbb Q}(\sqrt[3]{2},\omega) / {\mathbb Q}の自己同型写像でもあり、それは{\rm id},\tau,\tau^2(ただし\tau\tau(\sqrt[3]{2})=\sqrt[3]{2}\omegaで定まる)。
以上より{\rm id},\sigma,\tau,\sigma\tau,\tau^2,\sigma\tau^2 はすべて{\mathbb Q}(\sqrt[3]{2},\omega) / {\mathbb Q}の自己同型で、すべて相異なることが確認できる。拡大次数が6だったからこれが全ての自己同型である。

半直積の例:二面体群

Gをアーベル群とする。(演算を加法的に書く。)
g\in Gを逆元-gに移す写像\phiは自己同型である。また、
f:{\mathbb Z}/2{\mathbb Z} \rightarrow Aut(G)f(0)={\rm id}, f(1)=\phi で定めると、
これは準同型である。よって半直積G {\rtimes}_f ~ {\mathbb Z}/2{\mathbb Z}が定まる。
これはどんな群だろうか。(g_1,h_1),(g_2,h_2)\in G {\rtimes}_f ~ {\mathbb Z}/2{\mathbb Z}とすると、
(g_1,h_1)(g_2,h_2)=(g_1+f(h_1)(g_2),h_1+h_2). よって、
h_1=0のときは(g_1,0)(g_2,h_2)=(g_1+g_2, h_2). 加法になる。
h_1=1のときは(g_1,1)(g_2,h_2)=(g_1-g_2, 1+h_2). 引き算になる。

また、G={\mathbb Z}/n{\mathbb Z} のとき、
{\mathbb Z}/n{\mathbb Z} {\rtimes}_f ~ {\mathbb Z}/2{\mathbb Z} は 二面体群D_n と同型になる。
証明:
 D_{n}=\langle r,s\mid r^{n}=s^{2}=1,\ rs=sr^{-1}\rangle とする。
\Phi:{\mathbb Z}/n{\mathbb Z} {\rtimes}_f ~ {\mathbb Z}/2{\mathbb Z} \rightarrow D_n を、
\Phi( (x,y) )=r^x s^y で定義する。
これが同型であることを示す。
\Phi( (x_1,0)+(x_2,y) )=\Phi( (x_1+x_2,y) )\\=r^{x_1+x_2}s^y=r^{x_1}r^{x_2}s^y=\Phi( (x_1,0) )\Phi( (x_2,y) ).
\Phi( (x_1,1)+(x_2,y) )=\Phi( (x_1-x_2,1+y) )\\=r^{x_1-x_2}s^{1+y}=r^{x_1}r^{-x_2}s \cdot s^y
rs=sr^{-1}より、r^{x}s=sr^{-x}だから、
r^{x_1}r^{-x_2}s \cdot s^y = r^{x_1}s r^{x_2}s^y =\Phi( (x_1,1) )\Phi( (x_2,y) ).
以上より\Phiは準同型である。
さらに、ker\Phi =\{(x,y)|r^x s^y = e \}\\=\{(x,y)|x \equiv 0\mod n,~~ y \equiv 0\mod2\}=\{(0,0)\}だから、\Phi単射
両辺は有限群で、位数が等しいから、単射ならば全射でもある。よって\Phiは同型写像

群の外部半直積

Gを群とする。同型写像\phi:G\rightarrow Gの全体をAut(G)と書くと、これは写像の合成に関して群をなす。
証明:
写像の合成だから結合律を満たす。
単位元は、恒等写像である。
\phi \in Aut(G)の逆元は\phi^{-1}だが、\phi^{-1} \in Aut(G)であることを示す。準同型であることを示せばよい。\phi(\phi^{-1}(g)\phi^{-1}(h))=\phi(\phi^{-1}(g))\phi(\phi^{-1}(h))=ghだから、両辺の\phi^{-1}をとって\phi^{-1}(g)\phi^{-1}(h)=\phi^{-1}(gh). よって準同型。
以上より、群である。

定義(半直積)
G,Hを群とする。f:H\rightarrow Aut(G) をある準同型とする。
f(h)を、f_hとも書くとする。準同型だからf_{h_1 h_2}=f_{h_1}\circ f_{h_2}である。
半直積G\rtimes_{f}H とは、
直積集合G\times H に次の演算を入れた群である:
(g_1,h_1)(g_2,h_2)=(g_1f_{h_1}(g_2),h_1 h_2)
これが群であることを確認していこう。
まず結合律。
\{(g_1,h_1)(g_2,h_2)\}(g_3,h_3)=(g_1f_{h_1}(g_2),h_1 h_2)(g_3,h_3) \\ =(g_1f_{h_1}(g_2)f_{h_1 h_2}(g_3), h_1h_2h_3)=(g_1f_{h_1}(g_2)(f_{h_1}\circ f_{h_2})(g_3), h_1h_2h_3)
(g_1,h_1)\{(g_2,h_2)(g_3,h_3)\}=(g_1,h_1)(g_2f_{h_2}(g_3),h_2 h_3) \\ =(g_1 f_{h_1}(g_2f_{h_2}(g_3)),h_1h_2h_3)=(g_1 f_{h_1}(g_2)(f_{h_1}\circ f_{h_2})(g_3)),h_1h_2h_3)
よって結合律は成り立つ。

次に単位元の存在。e単位元を表すと、(e,e)(g,h)=(ef_{e}(g),eh)=(f_{e}(g),h)であり、
fは準同型だから、f_{e}単位元、つまり恒等写像。よって(f_{e}(g),h)=(g,h).
また、(g,h)(e,e)=(gf_{h}(e),he)=(ge,h)=(g,h).
よって(e,e)単位元である。

最後に逆元の存在。群論の一般論から、右逆元の存在さえ示せばいい。(f_{h}^{-1}(g^{-1}),h^{-1})が右逆元になることを示す。(g,h)(f_h^{-1}(g),h)=(g(f_{h}\circ f_h^{-1})(g^{-1}),hh^{-1})=(gg^{-1},e)=(e,e). よって示された。

今日はひとまずここまで。

環論メモ(極大イデアルによる剰余環)

{\mathbb Z}/ n{}\mathbb Z は、nが素数のときのみ体になる。これは整数論で有用だ。これを一般化しよう。

今回の主定理
A:環, I\subset A:イデアルとする。このとき、
Iは極大イデアル\Leftrightarrow剰余環A/Iは体。

まず次の補題を示す。
補題
Rが体\LeftrightarrowRイデアル\{0\}R自身のみである。
証明
まず、Rが体であるとする。I\subset Rイデアルとし、I \neq \{0\}とする。仮定よりあるr \neq 0があってr \in I. よって 1 = r^{-1}r \in I. よって任意のr' \in Rに対してr' = r'\cdot 1 \in I.よってI=R. 以上よりI=\{0\}またはI=R.
逆に、Rイデアル\{0\}R自身のみであるとする。任意にr \in Rをとると、rR = \{0\}またはrR=Rであり、前者のとき、任意のr' \in Rに対してrr'=0だからr=0. 後者のとき、1 \in R = rRよりあるr' \in R が存在してrr'=1となるからrは可逆元。よって任意の元が零元か可逆元だから、Rは体。(終)

さらに前回(環論メモ(イデアルと剰余環) - 数学大好き宣言!)より、次が言える:
定理 A:環, I\subset A:イデアル, \pi:A \rightarrow A/I:自然な射影とする。このとき、AIを含むイデアルと、A/Iイデアルは一対一対応し、その対応はA \supset J \mapsto \pi(J) \subset A/I, A/I \supset J' \mapsto \pi^{-1}(J') \subset Aで与えられる。

これらを用いて、主定理を証明しよう。
主定理の証明
まず、Iを極大イデアルとする。Iを含むAイデアルI,Aのみだから、A/Iイデアル\pi(I)=\{0\}\pi(A)=A/Iのみ. よってA/Iは体。
逆にA/Iが体であるとすると、Iを含むAイデアル\pi^{-1}(\{0\})=I\pi^{-1} (A/I) =Aのみ. よってIは極大イデアル。(終)


K:体、 f(x)\in K[x]とする。K[x]/(f(x))が体であることと、f(x)が既約であることは同値。
証明:K[x] は単項イデアル環だから、f(x)K[x] \subset g(x)K[x] \Leftrightarrow g(x)f(x)を割り切る。よってf(x)が既約なことはf(x)K[x]が極大イデアルであることと同値。
こうして体の拡大の理論も支えている定理なのだ。

環論メモ(イデアルと剰余環)

整数環におけるmodと同じことを、任意の環でも考えることができる。

1:剰余環の定義
A:環, I\subset A:イデアル
a,b\in Aに同値関係\sim を、
a \sim b :\Leftrightarrow a-b\in I
で定める。これが同値関係であることは、
a-a=0\in I,
a-b\in Iならばb-a=-(a-b)\in I,
a-b, b-c\in Iならばa-c=(a-b)+(b-c)\in I
から分かる。
また、a\sim b,c\sim dのとき、
(a+c)-(b+d)=(a-b)+(c-d)\in Iよりa+c\sim b+d,
ac-bd=ac-bc+bc-bd=(a-b)c+b(c-d)\in Iよりac\sim bdだから、
商集合A/\sim の同値類に演算を
[a]+[b]=[a+b],~ [a][b]=[ab] で定めると、well-definedになる。
演算が結合法則・分配法則を満たすことはもとの演算の結合法則・分配法則より明白で、
[0]は零元、[1]単位元になるから、
A/\sim は環になる。これをA/Iと書く。

2:剰余環のイデアルの構造
AからA/Iへの環準同型\phi\phi(a)=[a]で定める.
\phi全射だから、A/I=\phi(A)と書ける。
I\subset Jを満たすAイデアル全体を{\mathcal I},
A/Iイデアル全体を\mathcal I'とする。
補題1
(1)J\in {\mathcal I}なら\phi(J) \in {\mathcal I'}.
(2)J'\in {\mathcal I'}なら\phi^{-1}(J') \in {\mathcal I}.
(3) \phi^{-1} : {\mathcal I'} \rightarrow {\mathcal I} \phi : {\mathcal I} \rightarrow {\mathcal I'} の逆写像
証明
(1)x,y\in \phi(J),~ z\in \phi(A)とする。このとき\phi(a)=x,~\phi(b)=y,~ \phi(c)=zを満たすa,b\in J,~c\in Aが存在する。
a+b,~ ca\in Jだから、\phi(a+b)=\phi(a)+\phi(b)=x+y\in\phi(J),\phi(ca)=\phi(c)\phi(a)=zx \in \phi(J).
よって加法とスカラー倍で閉じているからA/Iイデアル

(2)x,y \in \phi^{-1}(J'), ~ z \in A とする。このとき\phi(x),  \phi(y) \in J'だから、
\phi(x+y)=\phi(x)+\phi(y) \in J', \phi(zx)=\phi(z)\phi(x) \in J'.
よって x+y, zx \in \phi^{-1}(J'). よって加法とスカラー倍で閉じているからAイデアル
また0_{A/I}A/Iイデアルとすると、 \phi^{-1}(J') \supset \phi^{-1}(\{ 0_{A/I} \})=I.

(3)\phi全射だから、\phi^{-1} \circ \phi(J) = J.

とてもきれいな対応だ。集合論で綺麗に示せるのも楽しい。