グラフの調和関数とラプラシアン行列
グラフ理論です。
グラフとは、頂点の集合と、頂点をつなぐ辺の集合の組。考えるグラフは単純グラフとする。単純グラフとは、ループ(両端が同一の点である辺)と多重辺(ある2頂点をつなぐ辺が複数ある状態)のないグラフのこと。
f(x)を(単純)グラフの頂点から実数への関数とする。
頂点aと辺でつながっている頂点の集合をと書く。a自身は含まない。f(x)が調和関数とは、での値の平均が、aでの値と等しいこと、つまり (|A|で集合Aの要素数を表すとする)
連結で有限なグラフにおいて、調和関数は定数関数しかない。グラフが連結とは、どんな2頂点の間も、辺を辿ってたどりつけること。次の平均値の性質を使って証明する: 数集合の平均値は最大値より小さく、平均値と最大値が一致するのは、集合のすべての値が等しいときのみ。
証明:f(x)を調和関数とする。グラフは有限だから、f(x)が最大となる頂点が存在する。その1つをaとする。調和関数の定義より、{f(x)|x∊}の平均はf(a)に等しい。平均値の性質より、{f(x)|x∊}の最大値Mはf(a)以上だが、f(a)の最大性より、M=f(a).平均値の性質より、すべてのx∊でf(x)=f(a).次にb∊をとり同様の議論をして、すべてのx∊でf(x)=f(b)=f(a).これを繰り返すことで、すべての頂点xでf(x)=f(a)がわかる(グラフが連結だから)。調和関数は、グラフの連結性を測ると言える。
グラフに付随する行列をいくつか定義する。
グラフの頂点に自然数で番号を振る。i番目の頂点をと書く。
グラフの次数行列とは次で定義される行列:\begin{pmatrix}
|X_{a_1}|& && 0 \\\
& |X_{a_2}| & & \\\
& & \ddots & \\\
0 & & &|X_{a_n}|
\end{pmatrix}
ただし、nはグラフの頂点の総数。
グラフの隣接行列とは、ij成分が次のである行列:
ただし、と定める。
行列というより表のようだが、次のラプラシアン行列を考えると、調和関数との関係が出てくる。
グラフのラプラシアン行列とは、で定義される行列のこと。これは解析学のラプラシアン∆の類似で、グラフ調和関数に作用させると0になる:
これは実際に展開すると確認できる:
(ただしで第i成分がの縦ベクトルを表すとする。)
※ラプラシアン行列は、∆というよりは-∆の類似と言われている。