数学大好き宣言!

勉強メモ。おもしろいことを探していきたい。

p進解析関数

p進解析を勉強した。↓メモ↓

問題 p進数の世界でも、指数関数exp(x)や対数関数log(x), 三角関数sin(x)などを考えられるだろうか?

この問題をどのように考えるか。1つのアプローチとして、冪級数\sum_{n=0}^{\infty}a_n x^nを考えて(例えばexp(x)ならa_n=1/n!を考えて)、これがある範囲でp進収束するなら、それを冪級数が表す関数のp進版とする、という方法が考えられる。他にも、積分を用いたりなど色々方法はあるだろうが、今回はこの冪級数の方法で考えてみよう。(補足:p進→p進の関数の積分は定義が困難で、素朴に定義することができない。いい方法とは言えないかもしれない。)

そうするとつまり、\sum_{n=0}^{\infty}a_n x^nの収束(xがどんな値のとき収束するのか)を考えねばならないことになる。もっと一般に、p進無限級数の収束判定を考えてみよう。コーシー列の考え方(コーシーの判定法)より、\sum_{n=0}^{\infty}a_nが収束することは、m,n→∞のとき\sum_{k=m}^{n} a_k \rightarrow 0となることと同値である。実はこの条件、かなり単純化できる。

強三角不等式を使ってみよう。

m,n→∞のとき\sum_{k=m}^{n} a_k \rightarrow 0とは、m,n→∞のとき|\sum_{k=m}^{n} a_k|_p が実数列として0に収束するということ。ここで強三角不等式より、
\displaystyle \left|\sum_{k=m}^{n} a_k \right|_p \leq \max \{ |a_m|_p, |a_{m+1}|_p, \cdots ,|a_n|_p \}だから、|a_n|_p \rightarrow 0(つまりa_n \rightarrow 0)(n→∞) であれば\sum_{k=m}^{n} a_k \rightarrow 0は成り立ち、\sum_{n=0}^{\infty}a_nは収束する。
一方で逆、つまり「\sum_{n=0}^{\infty}a_nが収束するならばa_n \rightarrow 0(n→∞)」は成り立つ。
よって結局\sum_{n=0}^{\infty}a_nが収束することとa_n \rightarrow 0(n→∞)とは同値!
定理 \sum_{n=0}^{\infty}a_nが収束する~\Leftrightarrow~a_n \rightarrow 0(n→∞)

では、これを使って、早速\sum_{n=0}^{\infty} \frac{x^n}{n!}の収束・発散を調べよう。これが収束すれば、その範囲での値はexp(x)のp進版と呼べるはずだ。先ほどの収束判定法より、これの収束を調べるということは、つまり次の問題を考えることになる。
問題 数列~x^n/n! がp進的に0に収束するようなxの範囲を求めよ。


|x|_p \geq 1のときに~x^n/n!は0に収束しないことはすぐにわかる。なぜなら分子のx^nはpで割れず(p進絶対値が1より小でなく)、分母はp進絶対値を小さくしない(むしろ大きくする)からだ。

|x^n/n!|_p=|x|_p^n / |n!|_p=p^{-\{n\cdot v_p(x) - v_p(n!)\}} だから、|x|_p \lt 1のときにはv_p(n!) ,つまりn!に含まれる素因数pの個数を調べる必要がある。
階乗の素因数の公式v_p(n!)=\sum_{k=1}^{\infty} \lfloor n/p^k \rfloor (ただし\lfloor ~\rfloorは床関数(ガウス記号)) を使おう。これによって、
v_p(x^n/n!)=n\cdot v_p(x)-\sum_{k=1}^{\infty} \lfloor n/p^k \rfloor がわかる。
これが∞に発散するのがx^n/n!が0に収束するとき。

床関数だから、
n\cdot v_p(x)-\sum_{k=1}^{\infty} \lfloor n/p^k \rfloor \geq n\cdot v_p(x)-\sum_{k=1}^{\infty} n/p^k \\= n\cdot v_p(x) - \frac{np^{-1}}{1-p^{-1}} =n(v_p(x)-\frac{1}{p-1})
ここまで来ればもう分かる。v_p(x)-\frac{1}{p-1} が正なら、v_p(x)-\frac{1}{p-1} \rightarrow \infty(n→∞)よりv_p(x^n/n!) \rightarrow \infty(n→∞).
それはどんなときかと言うと、pが2の場合はv_p(x) \geq 2のとき、それ以外はv_p(x) \geq 1のとき。

|x|_p \geq 1つまりv_p(x) \leq 0のときには、~x^n/n!は0に収束しないのだから、pが奇素数のときには、v_p(x) \geq 1~x^n/n!が0に収束する必要十分条件を与えている。p=2のときには、まだv_p(x)=1 のときどうなるか?が試されていない。
p=2,v_p(x)=1のとき、~x^n/n!の部分列x^{2^m}/(2^m)!をとろう。v_2(x^{2^m}/(2^m)!) = 2^m - \sum_{k=1}^{\infty} \lfloor 2^m/2^k \rfloor \\ =2^m - \sum_{k=1}^{m} 2^{m-k}=1.
よって部分列が0に収束しないから、~x^n/n!は0に収束しない。
よってp=2のときは、v_2(x) \geq 2必要十分条件であることが分かった。

v_p(x) \geq nとなるp進体の部分集合は p^n{\mathbb Z}_p だから、結局次が分かった:
定理 \sum_{n=0}^{\infty} \frac{x^n}{n!} がp進収束する \Leftrightarrow 「p=2かつx\in 4{\mathbb Z}_2」または「p≠2かつx\in p{\mathbb Z}_p

今回はここまでにしておく。logやsin, arcsin ではどうなるだろうか。