多変数ベータ関数、ガンマ関数との関係
nを自然数とする。多変数ベータ関数とは
(ただし)
これは通常のベータ関数同様、次のガンマ関数による表示をもつ:
証明)
ここで変数変換をする。
,ただし
。
また、 とおく。
,
とおく.ΦはDからEへの関数で、Φは一対一対応であることを示す。
のとき、定義式より
よってΦはDからEへの関数である。
次に一対一対応であることを、逆写像を構成することで示す。
より、はで表せる。よって、
とおくとこれはΦのℝⁿ上の逆関数であって、
のとき、式から直ちにがわかる。
よってこれはEからDへのΦの逆関数である。
よって逆関数が存在するからΦは一対一対応。
つぎにヤコビアンを計算する。
,
i≤ n-1 のとき
i=n のとき
ウォリス積の一般化(含むレムニスケート周率)
主定理:m,nが自然数で、n≠1のとき、
ベータ関数を使って示す。
ベータ関数とは
で定義される関数である。
, とする。
と置換積分する。のとき で、 だから、
ガンマ関数との関係式より、
(とより)
ここでガンマ関数の無限乗積表示より(ガンマ関数の積の比の無限積表示・多変数ベータによる表示 - 数学大好き宣言!の(1)の最後の式より)
結局、次の式が得られた。
辺々mで割って
(証明終)
これがウォリス積の一般化になっていることを見よう。m=n=2のとき、
となり無事ウォリス積が得られた。
さらに、有名なレムニスケート周率のウォリス積類似も得られる。m=4, n=2のとき、
9/16 もう少し変形した方が綺麗かつ興味深い。
ベータ関数の無限乗積表示
ベータ関数とは
で定義される関数。
この記事では、
ベータ関数の無限乗積表示:
を示す。
ベータ関数はガンマ関数と次のような関係がある:
こちらのサイト様で証明が読める:ガンマ関数とベータ関数の関係式とその証明 | 数学の景色
さて、ガンマ関数には次の無限乗積表示がある(ガウス公式):
(こちらのサイト様より→ガンマ関数の無限積表示 | 理系ノート)
とおくと、
よって
約分して、
だから、
指数定理・加法定理と微分方程式 (偏微分利用)
f(x)=e^x とおくと、これは指数定理f(x+y)=f(x)f(y)を満たす。ここから微分方程式を導こう。
両辺をxで微分して、
f'(x+y)=f'(x)f(y).
両辺をyで微分して、
f'(x+y)=f(x)f'(y).
よってf'(x)f(y)=f(x)f'(y). y=0を代入して
f(0)f'(x) = f'(0)f(x).
e^0=1 とf'(0)=1 さえ求められれば、微分方程式f'(x)=f(x)を満たすことが分かる。
次に三角関数だ。sin(x)=f(x), cos(x)=g(x) とおくと、加法定理は
f(x+y)=f(x)g(y) + g(x)f(y). 両辺をx, yでそれぞれ微分して
f'(x+y)=f'(x)g(y)+g'(x)f(y)
f'(x+y)=f(x)g'(y)+g(x)f'(y)
よって、y=0を代入すれば
f'(x)g(0)+g'(x)f(0)=f(x)g'(0)+g(x)f'(0).
f(0)=sin0=0, g(0)=cos0=1 を使うと、g'(0)=A, f'(0)=B とおけば
f'(x)=Af(x) + Bg(x)
さらにg'(0)=0, f'(0)=1 も分かれば
f'(x)=g(x) つまりsin'(x)=cos(x) が分かる。
多項式x²-x+1 の反復合成と素数の無限性証明
f(x)=x^2 - x + 1 として、f^2(x)=f(f(x)), f^3(x)=f(f(f(x))), ... を計算してみる。
f^2(x)=x^4 - 2*x^3 + 2*x^2 - x + 1
f^3(x)=x^8 - 4*x^7 + 8*x^6 - 10*x^5 + 9*x^4 - 6*x^3 + 3*x^2 - x + 1
f^4(x)=x^16 - 8*x^15 + 32*x^14 - 84*x^13 + 162*x^12 - 244*x^11 + 298*x^10 - 302*x^9 + 258*x^8 - 188*x^7 + 118*x^6 - 64*x^5 + 30*x^4 - 12*x^3 + 4*x^2 - x + 1
どれも定数項が1となっている。
証明してみよう。定数項とはx=0を代入した値だから、
任意の自然数nで f^n(0)=1 であることを示せばよい。
f(0)=1, f(1)=1 だから、
f^n(0)=f^{n-1}(1)=1. よって示された。
数列{a_n}を
a_0=2, a_{n+1}=f(a_n) と定義する。
a_n≠1 が帰納的に分かり、またf^k(x)の定数項が1であることより、
m≠n なら a_m, a_n は互いに素。
よって各a_n の素因数に同じものは登場しないから素数を無限に生成できる。
※なぜ互いに素か?
m≠nのとき、m>nとしてよく、m-n=kとおくとk>0だからa_m=a_{n+k}=f^k(a_n)≡1(mod a_n) よって互いに素。
3元2次形式の「クリスマス型」定理 (数値実験)
フェルマーのクリスマス定理とは
「pが素数のとき p≢3 (mod 4) ⇔ x²+y²=p が整数解をもつ」
という定理のこと。
ところで、次の定理が知られている:
定理(1798,ルジャンドル)
nが自然数のとき n=4ᵏ(8m+7) (k,mは非負整数) ⇔ x²+y²+z²=n が整数解をもたない
この定理において、n=pを素数に制限すれば、pは4の倍数でないから、
「pが素数のとき p≢7(mod 8) ⇔ x²+y²+z²=p が整数解をもつ」
という、クリスマス定理にそっくりの定理が得られる。
計算ツールを使って、このような定理をたくさん探してみた。
クリックで計算結果が開きます。
注意:2変数の場合からすぐに証明できることもある。
例:(定理)p≢3 (mod 4) ⇔ x²+y²+4z²=pが整数解をもつ
証明:⇒は、x²+y²=p の解を使えばよい。
⇐も簡単。x²+y²+4z²=pの両辺のmod4 をとると x²+y²≡p(mod 4). (平方数)≡0,1(mod 4) だから左辺は3ではない。(x²+y²=pのときと全く同じ議論)
代数的数の近似と不定方程式(トゥエの定理)
突然だが、実代数的数の近似に関して、次のような定理がある。
定理(トゥエの定理)
αをn次の実代数的数(nはもちろん2以上)、κ>n/2 + 1 とする。このとき、αとκで決まる正定数cが存在して、
がすべての有理数p/q に対して成り立つ。
※これは近似しにくさを表していると言える。
ここからなのだが、なんとこの定理を用いて、不定方程式に関する次の定理が導ける!!
定理
整係数、既約n(≥3)次形式
・・・(1)
と非負整数mに対して、不定方程式f(x,y)=mの整数解は高々有限個である(無いか有限個ということ)。
(証明)
f(x,1)のn個の根をとおくと、
(1)は
・・・(2)
と変形できる。
f(x,y)が既約と仮定していたから、f(x,1)は既約。よって重根をもたないから、
・・・(3)
主定理を背理法で示す。(1)つまり(2)が無限個の解をもつとする。yが有界とすると、xは有界ではない。このとき左辺はいくらでも大きくなりうるが、右辺はそうでないから矛盾。
よってyは有界ではない。yの絶対値が大きくなると(2)の右辺は0に近づくから、左辺の因子のうち少なくとも1つは0に近づく。そのような因子に当たる解のひとつをとおく。
このとき、(1)の無限個の解の列{xₖ},{yₖ} で、yₖの絶対値が単調増加で、が0に収束するものが選べる。また、αは有理数でいくらでも近づけるのだから、αは実数である。いま、
・・・(4)
となるようなk₀をとることができる(ε-δ論法より)。
(3)より
三角不等式より
だから、k≥k₀のとき、辺々-(4) を足して(-1倍すると不等号が逆転する)、
・・・(5)
さて、(2)に(xₖ , yₖ)を代入し、両辺の絶対値をとると
ここに(5)を代入して
両辺を でわって
・・・(6)
一方、n≥3 より、 n>n/2+1. よっ
てn/2+1< κ < n を満たす実数κが存在し、このκとxₖ/yₖにトゥエの定理を適用すると
(6) とつなげて, 変形して
κ < n より n-κ > 0 だから、|yₖ| が十分に大きいときこの式は成り立たず、有限性に反する。よって矛盾が得られたから、定理は成り立つ。
※こちらのpdfにトゥエの定理の証明がのっている↓
http://math-seikei.sakura.ne.jp/wakabayashi/wakabaD1.pdf
参考文献
www.morikita.co.jp
自然数の素数冪乗 a^(p^n)
pを素数とする。
(定理1)a≡b (mod pⁿ) のとき、aᵖ≡bᵖ (mod pⁿ⁺¹)
証明:
a=b+tpⁿ と書けるから、
aᵖ=(b+tpⁿ)ᵖ=bᵖ + pbᵖ⁻¹(tpⁿ) + ₚC₂bᵖ⁻²(tpⁿ)² + ・・・
≡bᵖ (mod pⁿ⁺¹)
繰り返し適用してみよう。
のとき、
よって
よって
よって
(定理2)のとき、
任意の自然数nで
応用1:フェルマーの小定理の拡張
のとき、
証明:
より、だから、定理2より
よって
応用2:
任意の整数aについて、数列 はp進的に収束する。
証明:コーシー列であることを示す。
任意にε>0 をとる。Nを、 を満たす自然数とする。
m,n≥N, m>n とする。
だから、
よって定理2より
つまり
よって.
よってコーシー列だから収束する。□
p進連分数
p進数の世界でも、連分数を考えることができる!(収束する!)
pを奇素数とする。
f(x)=x²-2x-p とおく。
f(x)=x(x-2)-p だから、f(0)≡0(mod p), f(2)≡0(mod p).
また, f'(x)=2x-2 であり、f'(0)=-2≢0(mod p), f'(2)=2≢0(mod p). (pは奇素数より)
よってヘンゼルの補題より、f(x)=0はp進整数環上に、
α≡0(mod p)となる解αと、β≡2(mod p)となる解βをもつ。
aₙ=(αⁿ⁺¹+βⁿ⁺¹)/(αⁿ+βⁿ) とおく。
a₀=(α+β)/2=1,
aₙ₊₁=(αⁿ⁺²+βⁿ⁺²)/(αⁿ⁺¹+βⁿ⁺¹)=(2(αⁿ⁺¹+βⁿ⁺¹)+p(αⁿ+βⁿ))/(αⁿ⁺¹+βⁿ⁺¹) = 2+p(αⁿ+βⁿ)/(αⁿ⁺¹+βⁿ⁺¹) = 2+p/aₙ .
よって
一方、aₙ=(αⁿ⁺¹+βⁿ⁺¹)/(αⁿ+βⁿ) で、
α≡0(mod p), β≢0(mod p) より|αⁿ/βⁿ|ₚ≤p⁻ⁿ→0 (n→∞) だから、
aₙ→(α(αⁿ/βⁿ)+β)/( (αⁿ/βⁿ)+1)→β (n→∞).
よって
ほとんど初期値によらないことも示しておこう。
数列{aₙ}を、a₀=x∊(x≠0),
aₙ₊₁=2+p/aₙ で定義される数列とする。
このときaₙの一般項は
(Aαⁿ⁺¹+Bβⁿ⁺¹)/(Aαⁿ+Bβⁿ) (ただしA=β-x, B=x-α)
である。実際、n=0のとき
(Aα+Bβ)/(A+B)=(αβ-αx+βx-αβ)/(β-x+x-α)=(βx-αx)/(β-α)=x,
n+1を代入すると
(Aαⁿ⁺²+Bβⁿ⁺²)/(Aαⁿ⁺¹+Bβⁿ⁺¹)=(2(Aαⁿ⁺¹+Bβⁿ⁺¹)+p(Aαⁿ+Bβⁿ))/(Aαⁿ⁺¹+Bβⁿ⁺¹) = 2+p(Aαⁿ+Bβⁿ)/(Aαⁿ⁺¹+Bβⁿ⁺¹) = 2+p/aₙ .
よってaₙ=(Aαⁿ⁺¹+Bβⁿ⁺¹)/(Aαⁿ+Bβⁿ) で、
|αⁿ/βⁿ|ₚ≤p⁻ⁿ→0 (n→∞) だから、B≠0 のとき
aₙ→β (n→∞).
よってB=0つまりx≠αのとき、