数学大好き宣言!

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代数的数の近似と不定方程式(トゥエの定理)

突然だが、実代数的数の近似に関して、次のような定理がある。
定理(トゥエの定理)
αをn次の実代数的数(nはもちろん2以上)、κ>n/2 + 1 とする。このとき、αとκで決まる正定数cが存在して、
\left|\alpha-\dfrac{p}{q} \right|\gt \dfrac{c}{|q|^\kappa}
がすべての有理数p/q に対して成り立つ。
※これは近似しにくさを表していると言える。

ここからなのだが、なんとこの定理を用いて、不定方程式に関する次の定理が導ける!!
定理
整係数、既約n(≥3)次形式
f(x,y)=a_0 x^n +a_1 x^{n-1}y +\cdots +a_n y^n・・・(1)
と非負整数mに対して、不定方程式f(x,y)=mの整数解は高々有限個である(無いか有限個ということ)。

(証明)
f(x,1)のn個の根を\alpha_1,\cdots,\alpha_nとおくと、
(1)は
a_0(x/y-\alpha_1)\cdots(x/y-\alpha_n)=m/y^n・・・(2)
と変形できる。
f(x,y)が既約と仮定していたから、f(x,1)は既約。よって重根をもたないから、
d=\min_{i\neq j}|\alpha_i-\alpha_j|\gt 0・・・(3)
主定理を背理法で示す。(1)つまり(2)が無限個の解をもつとする。yが有界とすると、xは有界ではない。このとき左辺はいくらでも大きくなりうるが、右辺はそうでないから矛盾。
よってyは有界ではない。yの絶対値が大きくなると(2)の右辺は0に近づくから、左辺の因子のうち少なくとも1つは0に近づく。そのような因子に当たる解のひとつを\alpha=\alpha_{i_0}とおく。
このとき、(1)の無限個の解の列{xₖ},{yₖ} で、yₖの絶対値が単調増加で、 |x_k/y_k - \alpha|が0に収束するものが選べる。また、αは有理数でいくらでも近づけるのだから、αは実数である。いま、
k\geq k_0 \Rightarrow |x_k/y_k - \alpha|\leq d/2・・・(4)
となるようなk₀をとることができる(ε-δ論法より)。
(3)より
|(x_k/y_k - \alpha_i) - (x_k/y_k  - \alpha)|=|\alpha_i-\alpha|\geq d~ (i\neq i_0のとき)
三角不等式より
|x_k/y_k - \alpha_i| + |x_k/y_k  - \alpha|\geq |(x_k/y_k - \alpha_i) - (x_k/y_k  - \alpha)|\geq d~ (i\neq i_0のとき)
だから、k≥k₀のとき、辺々-(4) を足して(-1倍すると不等号が逆転する)、
|x_k/y_k - \alpha_i|\geq d/2~~(k\geq k_0, i\neq i_0 のとき)・・・(5)
さて、(2)に(xₖ , yₖ)を代入し、両辺の絶対値をとると
|a_0| |x_k/y_k-\alpha_1| \cdots |x_k/y_k-\alpha_n| =|m|/|y|^n
ここに(5)を代入して
|a_0| \cdot(d/2)^{n-1} |x_k/y_k - \alpha| \leq |m|/|y|^n (k\geq k_0)
両辺を|a_0| (d/2)^{n-1} でわって
|\alpha - x_k/y_k|\leq C/|y_k|^n (k\geq k_0), C=(2/d)^{n-1}|m/a_0|・・・(6)
一方、n≥3 より、 n>n/2+1. よっ
てn/2+1< κ < n を満たす実数κが存在し、このκとxₖ/yₖにトゥエの定理を適用すると
\left|\alpha-\dfrac{x_k}{y_k} \right|\gt \dfrac{c}{|y|_k^\kappa}
(6) とつなげてc/|y_k^\kappa|~ \lt C/|y_k|^n, 変形して
 |y_k|^{n-\kappa} \lt C/c
κ < n より n-κ > 0 だから、|yₖ| が十分に大きいときこの式は成り立たず、有限性に反する。よって矛盾が得られたから、定理は成り立つ。

※こちらのpdfにトゥエの定理の証明がのっている↓
http://math-seikei.sakura.ne.jp/wakabayashi/wakabaD1.pdf

参考文献
www.morikita.co.jp