数学大好き宣言!

勉強メモ。おもしろいことを探していきたい。

【集合論】ベン図が書けないときの要素数の計算

集合Aの要素数を|A|で表す。
いま|A|,|B|,|A∩B|が分かっているときに、|A∪B|を求めたいとする。
このとき下のようなベン図を書いて|A∪B|=|A|+|B|-|A∩B|が分かる。
三つの場合、つまり|A∪B∪C|が求めたい場合も同様にベン図から分かる。
f:id:mochi-mochi61:20210303172512p:plain:h200
しかし4つ以上になると、円ではベン図は書けないし、一応円にこだわらなければ書けるのだが、とても複雑でかえってわかりにくい。このときどうやって要素数を求めるか。
とても単純な発想として、|A∪B|=|A|+|B|-|A∩B|を使ってどんどんばらしていく方法がある。
三つの場合の例(本当はベン図で簡単にわかるけど):
|A∪B∪C|=|(A∪B)∪C|
=|A∪B|+|C|-|(A∪B)∩C|
=|A|+|B|-|A∩B|+|C|-|(A∩C)∪(B∩C)|
=|A|+|B|-|A∩B|+|C|-|A∩B|-|B∩C|+|(A∩C)∩(B∩C)|
=|A|+|B|-|A∩B|+|C|-|A∩B|-|B∩C|+|A∩B∩C|
と求まる。4つや5つのときも時間はかかるが原理上求まる。
しかしこれでは大変すぎる。
もう少し良い方法がある。
全体集合をUとする。A⊂Uに対して、U上の関数A(x)を
x∊AのときA(x)=1, x∉AのときA(x)=0 として定めると、
これは(A∩B)(x)=A(x)B(x), Aᶜ(x)=1-A(x)(ただしAᶜはAの補集合を表す)
を満たす。
また、|A|=\sum_{x\in U}A(x)だから、|A|を求めるにはA(x)を求めればいい。
これを使って|A∪B∪C∪D|を求めよう。
以下しばらく関数のほうしか使わないので、わざわざA(x)と書かずAでA(x)を表す。
ド・モルガンの法則より(A∪B∪C∪D)ᶜ=Aᶜ∩Bᶜ∩Cᶜ∩Dᶜ だから、
(A∪B∪C∪D)=1-(Aᶜ∩Bᶜ∩Cᶜ∩Dᶜ) = 1-AᶜBᶜCᶜDᶜ
= 1-(1-A)(1-B)(1-C)(1-D)
展開して
(A∪B∪C∪D)=(A+B+C+D) - (AB+AC+AD+BC+BD+CD) + (ABC+BCD+CDA+DAB) - ABCD
(A∩B)=AB より
(A∪B∪C∪D)=(A+B+C+D) -
{(A∩B)+(A∩C)+(A∩D)+(B∩C)+(B∩D)+(C∩D)} +
{(A∩B∩C)+(B∩C∩D)+(C∩D∩A)+(D∩A∩B)} - (A∩B∩C∩D)
よって
|A∪B∪C∪D|=|A|+|B|+|C|+|D| - (|A∩B|+|A∩C|+|A∩D|+|B∩C|+|B∩D|+|C∩D|) + (|A∩B∩C|+|B∩C∩D|+|C∩D∩A|+|D∩A∩B|) - |A∩B∩C∩D|
これを使い、例えば1000以下の自然数で、2,3,5,7のいずれかで割り切れるものの個数を求めると、
500+333+200+142-(166+100+71+66+47+28)+(33+9+14+23)-4=772
で772個。

(3/3~)メモ(事実や資料まとめ)

(3/3)
・群は代数的構造を忘れると集合である。同様に群の圏の代数的構造を忘れさせることで集合の圏への関手が作れるらしく、これを忘却関手というらしい。そのまんまだ。
・位数pの有限体のガロア群がp乗で生成されることを示す。有限体𝔽pの有限次拡大Kにおいて、x^p-x=0の解は0,1,...p-1.つまりx^p=x⇔x∊𝔽pとなる。よってp乗写像σで生成される群<σ>⊂Gal(K/𝔽p)の固定体は𝔽pだから、ガロア理論より<σ>=Gal(K/𝔽p).なるほど。
ラプラシアン行列はキルヒホッフ行列とも言うらしい。
・グラフの第一ベッチ数は、ベッチより前にキルヒホッフにより導入されていたそうだ。しかし別にキルヒホッフは数学の研究者ではなく、物理学者だったらしい。
・グラフにはタイセット行列、カットセット行列というものがあるらしい。閉路や切断を定義に使う行列だ。電気回路への応用が多いようだ。
・キルヒホッフの第一法則は、有向グラフの接続行列で書ける。まず回路をグラフと見なし、各辺に向きを好きに決め、頂点と辺に番号を振っておく。k番目の辺における電流はさっき決めた向きにI_kの大きさだとする(逆向きは負)。これをk=1から順に縦に並べたベクトルをxとし、さらにグラフの接続行列をAとする。このときキルヒホッフの第一法則はAx=o(oは零ベクトル)と表せる。
・グラフの閉経路全体は行列で書ける。グラフの閉経路は、辺の整数係数の線形結合であって、境界がないものと特徴付けられるから、Aを接続行列、xを辺の線形結合を表すベクトルとして、Ax=oであるもの全体が閉経路。
・閉経路でないところに電流が流れえない(端点から電流が湧き出すことになるから)ことは、上の二つの関係を反映している。
・周回積分が0であることが、不定積分が定義できることを表すのと同様、キルヒホッフの第二法則は、電位を定義できることを示している。
・代数曲線の双有理同値を判定することは難しい問題だが、種数1の代数曲線はすべて双有理同値だから、このときは種数という位相的な量だけで双有理同値性を判定できる。
・有限体のハッセ・ヴェイユゼータ関数の特殊値は、ひとつの層ではとらえられず、モチビック複体と呼ばれる層の複体が関係するらしい。

反復合成多項式の剰余関係

f^nでfのn回合成を表すとする。例えばf^2(x)=f(f(x))というように。
f(x)を多項式、a,bを自然数としたとき、f^a(x)-xf^{ab}(x)-xを割り切る。これを示す。
{\mathbb Q}[x]で有理係数多項式全体を表す。
I=(f^a(x)-x){\mathbb Q}[x](f^a(x)-x) で生成される {\mathbb Q}[x]イデアルとする。f^{ab}(x)-x≡0\mod Iを示せばよい。
f^{ab}(x)≡(f^a)^b(x)=f^a\circ f^a\circ \cdots \circ f^a (f^a(x)のb回合成)≡x(\because f^a(x)≡x \mod I)
よってf^{ab}(x)-x≡0\mod Iだから、示された。
この証明方法から、さらにm≡n\mod a\Rightarrow f^m(x)≡f^n(x)\mod(f^a(x)-x){\mathbb Q}[x]
が分かる。なかなか面白い。

フィボナッチ数列計算機

フィボナッチ数列の計算機です。環境にもよると思いますが、5000番目くらいまでは普通に計算できます。


番目のフィボナッチ数

(ここに結果を表示)
↓コード↓

<script>
    function A(N){
        if(N>0){
            let a=1n;
            let b=1n;
            let c=0n;
            let n=0;
            while(n<N){
                result.innerHTML=a
                a=a+c
                c=b
                b=a
                n=n+1
            }
        }
        else{result.innerHTML="正の整数を入力してください"}
    }
</script>
<form onsubmit="return false;">
    <input type="number" id="N" />番目のフィボナッチ数
    <button type="button" onclick="A(N.value)">計算</button>
</form>
<div id="result">(ここに結果を表示)</div>

メモ
・「1n」「0n」などのnはbigintと言うそうで、大きな整数まで浮動小数点数にせずに計算できる。
・onsubmit="return false;"は、入力したことをどこかに送信するわけではないときに使い、入力フォームでEnterを押してもページが更新されないようにできるらしい。
・3項間漸化式を扱うには、このように中継地点となる三つ目の変数が必要だと思う。

プログラミング(?)やってみた

下のような整数の二乗計算機を作れるようになるまでのメモ


^2=
【動機】
nowanowa.github.io
↑こういうブラウザで動くの、便利なので作りたい。
何も知らないけど勉強する。
中学生か高校生の頃に授業で教わったサイト:HTMLクイックリファレンスが参考になりそう。
はてな記法を使う。

<button>ボタンだよ</button>

と書くと

このようにボタンが出てきた。
さらに

<input/>

と書くと

入力するところが出てきた。
名前をつけられた入力欄↓

<input name="A"/>


とても楽しい。
次のように書くと

<button onclick="A()">押して</button>
<script>
    function A() {
      alert("押されたよ");
    }
</script>



押すと関数A()が実行されるようになる。
onclickで起こることを決められるようだ。細かいことを言うと、押して離したときに起こるようだ。
数字専用の入力枠はこれで作れる↓

<input type="number"/>


見たことある感じになってきた。
outputを使って、ボタンを押されると文章が変わるしくみをつくってみる。

<form>
<button type="button" onclick="B.value='押された'">押す</button>
<output name="B">押されてない</output>
</form>



押されてない

nameも使っている。
ここまで分かれば二乗計算機も書ける。

<form>
<input type="number" name="a" />^2=<output name="result" ></output>
<button type="button" onclick="result.value=(a.value)*(a.value)">計算</button>
</form>


^2=

(2/22~)メモ(定理や事実と資料まとめ)

ルジャンドル記号のガウス和 Σ(a/p)exp(2πia/p) (ただし(a/p)はルジャンドル記号で、和はa=1からpまでとする)は、p番目の円分多項式=0という方程式の、二次のラグランジュゾルベントである。実際にガロア群を作用させてexp(2πia/p)をexp(2πiab/p) (b乗)に置き換えると、bが平方剰余なら(平方剰余な元全体のなす部分群に属するなら)ガウス和は不変で、そうでないなら-1倍される。よってガウス和の値はある有理数の単純な平方根になることが分かる。もっと別のディリクレ指標でも同様。
・新谷卓郎「代数体のL函数の特殊値について」https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku1947/29/3/29_3_204/_pdf新谷の研究のひとつに、類体論で重要な類体の構成問題の「スターク予想」からのアプローチがある。それについての文章。
・連分数は、超幾何関数とも関係するらしい。それを用いて、適切にパラメータをとれば、πやeの綺麗な連分数表示が得られるようだ。詳しくはこちら→ガウスの連分数 - Wikipedia。大量の非自明な等式が得られる様は圧巻。
・代数方程式の解の差積を調べると、ガロア理論よりガロア群が少し分かる。差積が方程式の分解体の元なのは当然だが、それは有理数平方根でもある。なぜなら差積の二乗(判別式)はすべての置換で不変だからだ。x^3-2=0の解の差積を調べてみよう。判別式は-108だから、差積は±6√-3。よってx^3-2=0の分解体には√-3が含まれることが分かるが、これはx^3-2=0の分解体体がℚ(2^(1/3),ω)であることからもわかる。おもしろい。
・x^17-1=0の解法を追うだけなら高校生にも可能だが、なぜうまくいくかを理解するにはガロア理論が必要。この事情は他の方程式でも同様(カルダノの解法など)。そこがおもしろい。

メモ(2/15~)

2/15
・最大不分岐アーベル拡大は有限次元だが、ある素数pの分岐だけは許したアーベル拡大は無限にある。(だから調べ甲斐がある?)
・f(x1,x2,...xn)をp進整数係数の多項式とし、a_kをZ/(p^k)Z でのf=0の解の個数とする。このとき形式べき級数Σa_k*t^kを井草・ポアンカレ級数というらしい。kは1~∞でとるので、定数項はない。これはどんなfでも有理関数になる(例えばt+t^2+...=t/(1-t)のように)ことを、ボレビッチとシャハレビッチが予想し、井草が示したらしい。井草ゼータ関数の定義を見れば、井草ゼータ関数との関係はすぐにわかる。ホモロジーポアンカレ多項式や、次数付きベクトル空間のヒルベルトポアンカレ級数との関係があるのかどうかは分からない。多分ないだろう。
・気になる本↓
www.nippyo.co.jp
これに出てくるポアンカレの和はホモロジーのほうか。目次にホモロジーの記号がある。
・Gをアーベル群とし、この上の複素数値関数全体をℂ(G)とおく。これはℂベクトル空間。G^をGの指標全体とすると、これは(ある内積において)ℂ(G)の正規直交基底をなす。Gにℝ/Zをとるとよく知られたフーリエ変換になる。G=Z/pZ(演算は加法)とするとG^={ζ^a | ζ=exp(2iπ/p), a=0,1,...p-1}であり、これを用いて、Z/pZの乗法的指標を展開すると、その係数にガウス和が現れる。上の本の「mod pのフーリエ解析」とは多分これのこと。
・Eisensteinの既約判定法はp進体でも(素数にpを選んだときのが)成り立つらしい。
ガウス和で合同式の解の個数を評価できるらしい。
・x^2-p=0はmod pでは解をもつが、p進数体では解をもたない。
・アデール環やイデール群上で調和解析をすることで、L関数の解析接続、関数等式などが証明できるらしい。
(2/19)
・前に書いたこの記事
バーゼル問題の楕円関数類似 - 数学大好き宣言!
のタイトルを「バーゼル問題類似」としているが、バーゼル問題はnを1から∞で足しているのに対し、この記事の定理では(0,0)を除くすべての格子点で足しているので正しくは類似と言えないかもしれない。ただ例えばω_1=1,ω_2=iの場合は全格子の1/4の部分での和のi^k倍の集まりと見なせる。その場合その1/4の部分での和をバーゼル問題類似と呼ぶことができる。

整数行列の単因子

この記事の内容:単因子論の整数バージョンの、単因子標準形に変形できるところまでの証明。一意性は示していない。

整数を成分とするm×n次正方行列全体をM(m,n;ℤ)と書く。

基本行列P_N(i,j), Q_N(i,-1), R_N(i,j,c) とは、次のようなN次正方行列のこと。
{\displaystyle P_N(i,j)={\begin{pmatrix}1&&&&&&\\&\ddots &&&&&\\&&0&&1(i行目)&&\\&&&\ddots &&&\\&&1&&0(j行目)&&\\&&&&&\ddots &\\&&&&&&1\\\end{pmatrix}}(1\leq i\lt j\leq N)}
{\displaystyle Q_N(i,-1)={\begin{pmatrix}1&&&&&&\\&\ddots &&&&&\\&&1&&&&\\&&&-1(i行目)&&&\\&&&&1&&\\&&&&&\ddots &\\&&&&&&1\\\end{pmatrix}}(1\leq i\leq N)}
{\displaystyle R_N(i,j,c)={\begin{pmatrix}1&&&&(\downarrow j列目)&&\\&\ddots &&&&&\\&&1&&c&&(\leftarrow i行目)\\&&&\ddots &&&\\&&&&1&&\\&&&&&\ddots &\\&&&&&&1\\\end{pmatrix}}}

(1\leq i\neq j\leq N,~c\in {\mathbb Z} - \{0\})

m×n行列にm次基本行列を左からかける操作を左基本変形, n次基本行列を右からかける操作を右基本変形と呼ぶ。両方を合わせて単に基本変形と呼ぶ。

二つの行列A, B∊M(m,n;ℤ) が、何回かの基本変形によって移りあうとき、AとBは対等であると言う。

次の定理が成り立つ。
定理 任意の行列 A∊M(m,n;ℤ) は次の単因子形に対等である。
{\displaystyle {\begin{pmatrix}e_{1}&&&&\\&\ddots &&&\\&&e_{r}&&\\&&&0&\\&&&&\ddots \end{pmatrix}}}
ただし、各eᵢは正の整数で、e₁|e₂| … |eᵣ (a|b はaがbを割り切ることを表す)。
さらに、この単因子形はAによって一意に決まる。正方行列のように見えるが違うことに注意。対角線は右下端に達するとは限らない。

今回は定理の前半を示す。
m,nに関する数学的帰納法で示す。
m=1, n=1 ならば明らか。
Aが零行列ならそれが単因子形だから、零行列ではないとする。
このとき、Aと対等な行列で、(1,1)成分が0でないものが少なくとも1つ存在する。
このような行列全体を考え、そのうちで(1,1)成分の絶対値が最小であるようなものの1つをとる。(1,1)成分が負の場合にQ_{m~{\rm or}~n}(1,-1)を左右どちらかから掛ければ、Aと対等で(1,1)成分が正の行列
B={\displaystyle {\begin{pmatrix}e_{1}&b_{12}&\cdots&b_{1n}\\b_{21}&b_{22}&\cdots&b_{2n}\\ \vdots &\vdots&&\vdots\\b_{m1}&b_{m2}&\cdots&b_{mn} \end{pmatrix}}}
が得られる。
このとき、Bの第一行および第一列の成分はすべてe₁で割り切れる。
なぜか説明しよう。b₁ⱼ (j≠1) がe₁ で割り切れないとする。このとき b₁ⱼ = e₁q + r となるような整数 q, r (0 < r < e₁)が存在する。B に右から Rₙ(j,1,-q) をかけ(これはj列に1列の-q倍を足す操作)、さらに右からPₙ(1,j)をかければ(1列とj列の交換)、得られる行列はAと対等で、(1,1)成分は r である。0 < r < e₁ よりこれはBのとりかたに矛盾する。
bᵢ₁ (i≠1)についても同様。
よってBの第一行および第一列の成分はすべてe₁で割り切れるから、掃き出し法により
C={\displaystyle {\begin{pmatrix}e_{1}&0&\cdots&0\\0&c_{22}&\cdots&c_{2n}\\ \vdots &\vdots&&\vdots\\0&c_{m2}&\cdots&c_{mn} \end{pmatrix}}}
(CはBと対等, したがってAと対等) が得られる。
m=1またはn=1のとき、これが単因子形。そうでないとき、Cの第一行と第一列を取り去った残りの行列
{\displaystyle {\begin{pmatrix}c_{22}&\cdots&c_{2n}\\ \vdots&&\vdots\\c_{m2}&\cdots&c_{mn} \end{pmatrix}}}
数学的帰納法を適用すれば、これは単因子形
{\displaystyle {\begin{pmatrix}e_{2}&&&&\\&\ddots &&&\\&&e_{r}&&\\&&&0&\\&&&&\ddots \end{pmatrix}}}
に移る。同じ変形でCも
D={\displaystyle {\begin{pmatrix}e_{1}&&&&&\\&e_{2}&&&&\\&&\ddots &&&\\&&&e_{r}&&\\&&&&0&\\&&&&&\ddots \end{pmatrix}}}
に移る(DもAと対等)このとき、e₂はe₁で割り切れる。
なぜか説明しよう。e₂ がe₁ で割り切れないとする。このとき e₂ = e₁q + r となるような整数 q, r (0 < r < e₁)が存在する。B に右から Rₙ(2,1,-q) をかけ(これは2列に1列の-q倍を足す操作)、さらに左からRₘ(2,1,1)をかければ(2行に1行を足す)、得られる行列はAと対等で、(結局(2,2)に(1,1)の-q倍が足されるから) (2,2)成分は r である。行と列の入れ替えで(1,1)成分をrにできる。0 < r < e₁ よりこれはBのとりかた((1,1)成分の絶対値はすべてのAと対等な行列の中で最小)に矛盾する(DもAと対等かつ(1,1)成分rがe₁より小さいから)。

よってDは単因子形だから、以上より定理の前半が示された。

メモ(2/6~)

(2/6)
・円分方程式が代数的に解けることの証明を思いついた。基本はガロア群が可解群である方程式を解く流れと一緒だが、p乗根が代数的に解けるという仮定は使えないことに注意する。例えば23等分方程式を解くとすると、23-1=2*11より、二次の巡回拡大と11次の巡回拡大をしなければならない。2次は簡単。11次巡回拡大は、「ラグランジュ・リゾルベント」の方法を使うために、1の11乗根を代数的に得る必要がある。すると今度は11-1=2*5より、1の5乗根が必要で、・・・とこのように、より小さい素数乗根を得る問題に帰着させていけるから、円分方程式は解ける。こんな簡単なこととは。
素数次巡回的な作用σ(a1)=a2,σ(a2)=a3,・・・σ(a{p-1})=a1があったら、V=a1+a2ζ+・・・(ζは1の原始p乗根)をつくればσ(V)=ζVとなり、V^pは不変だから冪根で解ける、というのがラグランジュゾルベントの発想。二次方程式の解法もこの考えを利用している。
(2/7)
・ℤ[x]のイデアル(x^2+1, 3x+2)を簡単にする。3(x^2+1)-(x-1)(3x+2)=x+5よりイデアル(x^2+1, 3x+2)はx+5を含むから、(x^2+1,3x+2,x+5)と等しい。あとはx+5を使って高次の項を消していけば(x+5,13)と等しいと分かる。最高次の係数が1の1次式をつくれた結果。
・a(x^2+1)+(bx+c)(3x+2)のうち、1次式になるものの最高次の係数は、任意のものをとれる。定数になるものは、13の倍数にしかならない。不定方程式を使ってわかる。
・f(x)(x^2+1)+g(x)(3x+2)=ax+bなら、(3x+2)(x^2+1)+(-x^2-1)(3x+2)=0よりg(x)をx^2+1で割ってh(x)(x^2+1)+(cx+d)(3x+2)=ax+b 両辺の次数よりh(x)は定数。x^2+1の最高次の係数が1だから多項式の割り算ができたようだが、f(x)も定数hになっているんだから、fは3x+2で割って余りを考えられることになる。f(x)=(3x+2)Q(x)+h. なぜうまくいくのか?
(2/10)
・ℤ[x]のあるイデアルをIとする。kを非負整数として、Iのk次以下の多項式の全体はℤ加群をなす。また、Iのk次以下の多項式のx^kの係数の全体に、0を追加したものはℤのイデアルになる。

数オリ(素数生成多項式の問題)

1987年の数学オリンピックの第六問「n2以上の整数とする.\displaystyle 0\leqq k\leqq \sqrt{\frac{n}{3}}をみたす任意の整数kに対して,k^2 + k + n素数ならば,0\leqq k\leqq n-2をみたす任意の整数kに対して,k^2+k+n素数であることを示せ.」
の解答をメモ。
前半の条件を仮定する。つまり、\displaystyle 0\leqq k\leqq \sqrt{\frac{n}{3}}をみたす任意の整数kに対して,k^2 + k + n素数だと仮定する。
mf(m)合成数になる最小の自然数とする。
このとき、n-2\lt mつまりn-1\leq mを示せばいい。
まず仮定より、m\gt \sqrt{\frac{n}{3}}つまり3m^2\gt n
f(m)を割り切る最小の素数pとする。このとき、
p^2\leq m^2+m+n\lt m^2+m+3m^2\\=4m^2+m\lt 4m^2+4m+1=(2m+1)^2
よってp\lt 2m+1つまりp\leq 2m.・・・(1)
ここで、f(m)-f(k)=(m^2+m+n)-(k^2+k+n)\\=m^2-k^2+m-k=(m-k)(m+k)+m-k\\=(m-k)(m+k+1)
だから、
\displaystyle\prod_{k=0}^{m-1}\bigl(f(m)-f(k)\bigr)=\prod_{k=0}^{m-1}(m-k)(m+k+1)\\=m(m+1)\cdot(m-1)(m+2)\cdot(m-2)(m+3)\cdots\cdot1\cdot 2m\\=(2m)!
(1) p\leq 2mよりp|(2m)!(a|bでaがbを割り切る)だから、p|\displaystyle\prod_{k=0}^{m-1}(m-k)(m+k+1)
よって、ある整数l~(0\leq l\leq m-1)が存在してp|(m-l)(m+l+1).
このときp|m-lp|m+l+1だから、p\leq m+l+1\cdots(2)
また、(m-l)(m+l+1)=f(m)-f(l)だからp|f(m)-f(l)でもある。
p|f(m)だからp|f(l).
l\leq m-1だから、mの最小性よりf(l)素数で、f(l)=p.
よってp=l^2+l+nだからp-l=l^2+n
(2)と合わせて
m+1\geq p-l=l^2+n\geq n
よってm+1\geq nつまりn-1\leq m.
これが示したいことであった。

(感想)
0\leqq k\leqq n-2をみたす任意の整数kに対して,k^2+k+n素数
n素数で、{\mathbb Q}(\sqrt{1-4n})の類数が1」
が知られているから、
\displaystyle 0\leqq k\leqq \sqrt{\frac{n}{3}}をみたす任意の整数kに対して,k^2 + k + n素数
n素数で、{\mathbb Q}(\sqrt{1-4n})の類数が1」
が分かる。これを直接示すことはできないのだろうか。(※nが素数なのはk=0を考えれば自明)

フルヴィッツの四元整数(2)

前回のつづき
前回リンク→フルヴィッツの四元整数(1) - 数学大好き宣言!

定理a,b\in Hとして、N(ab)=N(a)N(b).
証明: 行列表示によってa=\begin{pmatrix}x+iy & z+wi\\z-wi & x-iy \end{pmatrix}と表すと、
N(a)=\det\begin{pmatrix}x+iy & z+wi\\z-wi & x-iy \end{pmatrix}だから、
行列式の乗法性より定理が導かれる。

定理 a,b\in H,ab=0 \Leftrightarrow a=0またはb=0.
証明:右⇒左は明らかだから、左⇒右を示す。
a,b\in H,ab=0のとき、両辺のノルムをとるとN(a)N(b)=0.
N(a),N(b)は整数だから、N(a)=0またはN(b)=0.
a=x+yi+zj+wkとすると、N(a)=x^2+y^2+z^2+w^2だから、
N(a)=0ならx=0かつy=0かつz=0かつw=0 つまりa=0.
同様にN(b)=0ならb=0.
よってab=0 ならば a=0またはb=0.

定理 任意のa,b\in H, b\neq 0に対して、あるq,r\in Hが存在して、
 a=bq + r,N(r)\lt N(b)
証明: b^{-1}a=x+yi+zj+wkとする。ここで二つの場合に分けて証明をする。
(\rm{i})~x,y,z,wがすべて半整数のとき
b^{-1}a\in Hだから,q=b^{-1}a,~r=0とすれば
b\cdot b^{-1}a+0=a,N(r)=0\lt N(b)(b\neq 0より) となる。
(\rm{ii}) (\rm{i})以外のとき
x,y,z,wに最も近い整数をそれぞれX,Y,Z,Wとする。
q=X+Yi+Zj+Wkとし、r=a-bqとすると、a=bq+rで、
N(b^{-1})N(r)=N(b^{-1}a-q)\\=(x-X)^2+(y-Y)^2+(z-Z)^2+(w-W)^2
|x-X|,|y-Y|,|z-Z|,|w-W|\leq 1/2で、x,y,z,wの少なくとも一つは半整数でないことより
少なくとも一つは等号が成立しないから、
(x-X)^2+(y-Y)^2+(z-Z)^2+(w-W)^2\lt 4\cdot (1/2)^2=1
よってN(b^{-1})N(r)\lt 1だから、N(r)\lt N(b)
(\rm{i}),(\rm{ii})より、定理は示された。

フルヴィッツの四元整数(1)

四元数の性質を分けてメモ(定義、ユークリッド性、一意分解性)
リプシッツの四元整数とは、四元数a+bi+cj+dkで、a,b,c,dが全て整数のもの。
フルヴィッツの四元整数とは、四元数a+bi+cj+dkで、a,b,c,dの全てが整数であるか、全てが半整数(整数+1/2)であるもの。整数と半整数が混ざった1/2+i+j+kなどは違う。
リプシッツの四元数全体をL、フルヴィッツの四元整数全体をHとかく。
四元数には行列表現がある:四元数a+bi+cj+dkを複素行列
\displaystyle\begin{pmatrix}a+bi&c+di\\c-di&a-bi\end{pmatrix}
に対応させると、四元数の和、積はそれぞれ行列の和、積になる。
これにより、四元数の積の分配法則、結合法則スカラー倍との可換性などが分かる。L、Hでも同様。
Lが閉じているのはすぐに分かるが、Hが乗法で閉じていることはあまり明らかでないので、示す。
A,B\in L,~C=(1+i+j+k)/2として、(A+\chi C)(B+\chi 'C)\in Hを言えばよい(χ,χ'は0か1)。
(A+\chi C)(B+\chi 'C)=AB+\chi 'AC + \chi CB +\chi\chi'C^2
まずA,B\in LよりAB\in L\subset H.
\chi 'ACについて、A=a+bi+cj+dk (a,b,c,dは整数) とおくと、
\chi 'AC=\chi '(a+bi+cj+dk)C \\~\\ ~~~=\chi '(aC + ibC + jcC +kdC)
で、aCは、aが偶数のときは係数が整数になるのでHに入り、aが奇数のときは係数が半整数になるのでHに入る。同様にbC, cC, dC∊H.
さらに、X\in HのときiX, jX, kX\in Hとなることはi,j,kの関係式より分かる。よってaC + ibC + jcC +kdC はHの元の和なのでHの元。
よって\chi 'AC\in H.
同様に\chi CB\in H.
C^2=(1+i+j+k)(1+i+j+k)/4 を計算すると(2+2i+2j+2k)/4=(1+i+j+k)/2 となるので\chi\chi 'C^2\in H.
以上より(A+χC)(B+χ'C)はHの元の和なのでHの元。□
L,Hのノルムを、N(a+bi+cj+dk)=a^2+b^2+c^2+d^2で定める。ノルムは常に非負整数である。このことはLでは自明。
Hでも、a,b,c,dを整数としてN \Bigl((a+1/2)+(b+1/2)i+(c+1/2)j+(d+1/2)k \Bigr)=a^2+b^2+c^2+d^2+a+b+c+d+1だから成り立つ。

格子上の関数としてのモジュラー形式

ω₁, ω₂を複素数、k=1,2,...として、\displaystyle\sum_{(m,n)\in{\mathbb Z}^2-\{(0,0)\}}(m\omega_1+n\omega_2)^{-2k}という級数を考える。
これはω₁, ω₂という二つの変数の関数ともとれるが、(周期的)格子{\mathbb Z}\omega_1 + {\mathbb Z}\omega_2複素数値を返す関数ともとれる。だから格子を張る基底をとりかえて\displaystyle\sum(m(\omega_1+\omega_2)+n\omega_2)^{-2k}
のように書いても値は同じ。
この級数\omega_2^{-2k}でわり\omega_1/\omega_2=\tauとおくと、アイゼンシュタイン級数
G_{2k}(\tau)=\displaystyle\sum_{(m,n)\in{\mathbb Z}^2-\{(0,0)\}}(m\tau+n)^{-2k}
となるが、これがモジュラー形式となるのはこの「元は格子の関数」という事実によることになる。
モジュラー形式からは格子の関数をつくることができる。
(レベル1の)モジュラー形式とは、a,b,c,d\in {\mathbb Z},ad-bc=1のとき
\displaystyle f \left(\frac{az+b}{cz+d}\right) = (cz+d)^{-k}f(z)
となるようなRe(z)>0で正則な関数。
fから、格子Λの関数Fを作ろう。\Lambdaのℤ基底として\omega_1,~\omega_2がとれるとき(ただしRe(\omega_1/\omega_2)\gt 0)、つまり\Lambda={\mathbb Z}\omega_1 + {\mathbb Z}\omega_2と書けるとき
F(\Lambda):=-\omega_2^{-k}f(\omega_1/\omega_2)
と定めると、Fは格子上の関数になる。つまり、Fの値は基底のとり方によらない。
示す。\left(\begin{array}{ccc}a & b\\  c&d\end{array}\right) \left(\begin{array}{ccc}\omega_1\\\omega_2\end{array}\right)=\left(\begin{array}{ccc}\omega_1'\\  \omega_2'\end{array}\right)~(a,b,c,d\in {\mathbb Z},ad-bc=1)とする。
F({\mathbb Z}\omega_1'+{\mathbb Z}\omega_2') = F({\mathbb Z}(a\omega_1 + b\omega_2)+{\mathbb Z}(c\omega_1+d\omega_2))\\=(c\omega_1+d\omega_2)^{-k}f(\frac{a\omega_1 +b\omega_2}{c\omega_1+d\omega_2})\\=(c\omega_1+d\omega_2)^{-k}( (c\omega_1+d\omega_2)^k f(\omega_1/\omega_2) )\\=f(\omega_1/\omega_2)=F({\mathbb Z}\omega_1+{\mathbb Z}\omega_2)
だから、
\Lambda={\mathbb Z}\omega_1+{\mathbb Z}\omega_2={\mathbb Z}\omega_1'+{\mathbb Z}\omega_2'\\\Leftrightarrow \left(\begin{array}{ccc}a & b\\  c&d\end{array}\right) \left(\begin{array}{ccc}\omega_1\\\omega_2\end{array}\right)=\left(\begin{array}{ccc}\omega_1'\\  \omega_2'\end{array}\right)~(a,b,c,d\in {\mathbb Z},ad-bc=1)
よりFの値は基底に依らない。
逆に格子の関数FがもしF(a\Lambda)=a^{-k}F(\Lambda)という斉次性をもつなら、上の等式F(\Lambda)=-\omega_2^{-k}f(\omega_1/\omega_2)でFからモジュラー形式fをつくれる。

メモ

1/25
21時頃
・1より大きい実代数的数であって、自分以外の代数共役の絶対値が1より小さくなっているようなもののことを、Pisot数という。フィボナッチ数列の前後比が(1+√5)/2に近づいたり、(1+√5)/2の累乗がどんどん整数に近づく現象が一般化できる。Pisot–Vijayaraghavan 数、PV number などとも言う。おもしろい性質をもち、タイリングなどに使えるという。

オイラー好適な数(Idoneal number, numerus idoneus)とは、正の整数Dで、x² ± Dy² (x²はDy² と互いに素) と 一意に表現できるようなどんな整数も、素数の累乗か素数の累乗の2倍になるようなものを言う。簡単な判定法があるらしく、オイラーはこれを使って巨大素数をたくさん見つけたらしい。A most easy method for finding many very large prime numbers - CERN Document Server ここに方法が書いてある(オイラーの論文の英訳?)のだが、よくわからない。

・n²+n+41は、nが0から40のとき値がすべて素数になる。このような多項式は他にもいろいろあるらしい。
Prime-Generating Polynomial -- from Wolfram MathWorld ここにたくさん載っている。3次以上もあるのがおもしろい。単数が少ないことを使う?ので虚2次体だけだと思っていたのだが。理屈が知りたいのだが、引用元がうまく見つけられない。


ヴェイユコホモロジー - Wikipedia

・教授の方の紹介に、専門は「代数群」とたまに書かれているが、代数群の理論って何だろう?整数論の1分野?らしいが、謎。代数群と整数論 これを読めばわかるだろうか。

22時頃
Untitled Document 津山高専の数学クラブの活動記録。「PV number によるファレイ空間の結晶理論」に、pisot数が出てくるようなので気になる。他にもいくつか気になるものが。グラフの閉曲面への辺の交わらない埋め込みなど気になる。

第3回 「挑戦し、極める」飯高 教授、秋山 教授 | 理学部・自然科学研究科について-サイエンスインタビュー | 学習院大学理学部 より飯高先生(代数幾何の研究者)の言葉を引用:
 「抽象的な現代数学の中から一部分を抜き出して具体的な形にすると初等的に意味のある計算問題ができる。意味のある計算を繰り返すうちに数学的対象の本当の性質が見えてくる。 これが、「数学がわかった」という感覚、小平邦彦先生(飯高先生の師、フィールズ賞受賞者)のおっしゃった『数覚』を育むことになるのだと思います。 理想的な数学教育というのは、そういう意味のある計算問題が提示できる、つまり現代数学にある程度の理解があってそれを初等的な形に応用できることだと思うんです。
 「実際の研究では足し算と掛け算ばかりですよ。ときどき微分とかしますが、扱うのは多項式ですから簡単です。とても抽象的で難しそうな数学も、ある個別の問題に適用すると最終的には高校生がやるような計算になります。 そんな計算を何度も何度も繰り返すうちに理論というものができあがっていくんです。」なるほどなぁ。

・fをℚᵃˡᵍ (ℚの代数閉包) を係数とする多項式とする。α∊ℚᵃˡᵍ, fⁿ(α)=α とし(fⁿはfのn回合成)、nはそのようになる最小の自然数とする。O(α)={α, f(α), … , fⁿ⁻¹(α)} をαの周期系とよぶ。 λ = (fⁿ)'(α) (形式的微分) とする。λが1の冪根のとき、αを放物的周期点と呼ぶ。次のことが成り立つという:
1.放物的周期点の集合は、方程式族{fⁿ(x)-x=0 | nは自然数}の重解の集合に一致する。
2.fがd次のとき、放物的周期系の数はd-1個以下である。
後者の証明が特にむずかしい。理屈上は純代数的に証明できるはず。

1/26
素数生成多項式数学オリンピックに出たことがある。「n2以上の整数とする.\displaystyle 0\leqq k\leqq \sqrt{\frac{n}{3}}をみたす任意の整数kに対して,k^2 + k + n素数ならば,0\leqq k\leqq n-2をみたす任意の整数kに対して,k^2+k+n素数であることを示せ.(1987年)」

ヘッケ作用素の詳しい解説→ Lectures on Modular Forms and Hecke Operators - William Stein

フルヴィッツのゼータ関数の収束

フルヴィッツゼータ関数の収束を証明できたと思うのでメモ。

\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}(n+x)^{-s}~(s,x\in{\mathbb C})が、Re(s)\gt 1,x\neq 0,-1,-2,\cdotsのとき絶対収束することを示す。

まず、複素数z,wに対して、z^w e^{w\log z}で定義される。これは\log z=\log |z|+i\arg z (log|z|は実数値をとる)のarg(z)のとり方に依存するので、多価関数である。以下、0\leq \arg z \lt 2\piとする。

w=a+bi (a,bは実数), log|z|=c (実数値), arg(z)=d とすると、
z^w=e^{w\log z}=e^{w(\log |z|+i\arg z)}=e^{(a+bi)(c+di)}=e^{(ac-bd)+i(ad+bc)}
よって、|z^w|=|e^{ac-bd}|=|e^{a\log |z|-b\arg z}|=|z|^a\cdot e^{-b\arg z}
\arg z \lt 2\piより、-b\arg z\lt 2\pi |b|だから、|z^w|=|z|^a\cdot e^{-b\arg z}\lt|z|^a\cdot e^{2\pi |b|}

よって、s=σ+iτ (σ,τは実数, σ>1)とすると、

\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}|(n+x)^{-s}| \lt \sum_{n=0}^{\infty}|n+x|^{-\sigma} \cdot e^{2\pi |\tau|} = e^{2\pi |\tau|}\sum_{n=0}^{\infty}|n+x|^{-\sigma}

よって、\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}|n+x|^{-\sigma}が収束することを示せばよい。

x=x₁+x₂i(x₁, x₂は実数)とする。|n+x|=|n+x_1+x_2i|=\sqrt{(n+x_1)^2 + x_2^2}\geq |n+x_1|

(i)x₁≥0のとき、

すべてのnについて|n+x_1|=n+x₁\geq n

よって、n≥1のとき、σ>1より、|n+x|^{-\sigma}\leq n^{-\sigma}

\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}|n+x|^{-\sigma}=|x|^{-\sigma}+\sum_{n=1}^{\infty}|n+x|^{-\sigma}\leq |x|^{-\sigma}+\sum_{n=1}^{\infty}n^{-\sigma}\lt \infty

よって収束。
(ii)x₁<0のとき
十分大きな自然数Nをとれば、N+x_1 \geq 0
このとき n+x_1\geq n-N
よって n≥N+1 のとき、|n+x|\geq |n+x_1|=n+x_1\geq n-N \gt 0

よって\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}|n+x|^{-\sigma} \\= \displaystyle\sum_{n=0}^{N}|n+x|^{-\sigma} + \sum_{n=N+1}^{\infty}|n+x|^{-\sigma} \\ \leq \displaystyle\sum_{n=0}^{N}|n+x|^{-\sigma} + \sum_{n=N+1}^{\infty}(n-N)^{-\sigma} \\ =\displaystyle\sum_{n=0}^{N}|n+x|^{-\sigma} + \sum_{n=1}^{\infty}n^{-\sigma}

第二項はリーマンゼータ関数だからσ>1で収束し、第一項はx≠0, 1, 2,...より定数。

よって収束。